土居雅夫 薬学研究科教授、佐々木玲奈 同修士課程学生(研究当時)、濵田悠貴 同修士課程学生(研究当時)、鑓水大介 同博士課程学生(研究当時)らの研究グループは、京都府立医科大学、京都市立病院、東京医科歯科大学、千葉大学、昭和大学、慶應義塾大学、千寿製薬、理化学研究所と共同で、加齢によって生じるドライアイの原因疾患に対し、眼局所のホルモンを制御するイントラクライン機構の発見という独自の新所見に基づいた、新たな作用機序の治療アプローチを見出すことに成功しました。
ホルモンは内分泌腺で作られて標的臓器に届けられます。しかし、ステロイドホルモンについては、イントラクライン機構とよばれるホルモンが血流に放出されることなく、その場で効果を発揮する地産地消型の作用機序があり、1990年代から提唱され注目され続けてきましたが、実際の役割が十分にわかっていませんでした。
本研究は、このイントラクライン機構を眼のまぶたのマイボーム腺に見つけ、そのホルモン合成酵素の解明に基づいた補酵素点眼療法により、高齢者のドライアイの主原因となる同腺機能不全を改善できることを明らかにしました。マイボーム腺の機能には顕著な日周リズム(サーカディアンリズム)があり、酵素の活性ピーク時刻を狙った投薬が最も有効であることも明らかにしました。
老化メカニズムの解明とその制御は、超高齢化社会において喫緊の課題となっています。なかでも加齢にともなう血中の男性ホルモン/女性ホルモンの減少は、老化にみられる不可避な特徴です。今回の研究では、従来の血中を流れるホルモンではなく、組織局所のイントラクライン機構を操作するというこれまでにはない新しい発想に立った治療薬による加齢性疾患へのアプローチのあり方を初めて示すことができたといえます。
本研究成果は、2022年2月10日に、国際学術誌「Nature Aging」にオンライン掲載されました。
【DOI】https://doi.org/10.1038/s43587-021-00167-8
【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/267987
Lena Sasaki, Yuki Hamada, Daisuke Yarimizu, Tomo Suzuki, Hiroki Nakamura, Aya Shimada, Khanh Tien Nguyen Pham, Xinyan Shao, Koki Yamamura, Tsutomu Inatomi, Hironobu Morinaga, Emi K. Nishimura, Fujimi Kudo, Ichiro Manabe, Shogo Haraguchi, Yuki Sugiura, Makoto Suematsu, Shigeru Kinoshita, Mamiko Machida, Takeshi Nakajima, Hiroshi Kiyonari, Hitoshi Okamura, Yoshiaki Yamaguchi, Takahito Miyake, Masao Doi (2022). Intracrine activity involving NAD-dependent circadian steroidogenic activity governs age-associated meibomian gland dysfunction. Nature Aging, 2(2), 105-114.
京都新聞(2月11日 25面)、読売新聞(2月15日夕刊 8面)、Today UK News(3月11日)、朝日新聞(4月25日夕刊 3面)に掲載され、テレビ大阪(2月11日)で放送されました。