霊長類におけるグルタミン酸の旨味の起源 -体の大きな霊長類は旨味感覚で葉の苦さを克服-

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 糸井川壮大 霊長類研究所研究員、今井啓雄 同教授、戸田安香 明治大学特任講師、中北智哉 同助教、石丸喜朗 同准教授、早川卓志 北海道大学助教、栗原洋介 静岡大学特任助教、Amanda D. Melin カルガリー大学准教授、林真広 東京大学修士課程学生(研究当時)、蘆野龍一 同学術支援職員(研究当時)、河村正二 同教授、三坂巧 同准教授の研究グループは、アミノ酸センサーだと考えられていた旨味受容体が、霊長類の祖先ではイノシン酸やアデニル酸などのヌクレオチドを感度良く検出するセンサーとして機能していたことを見出しました。ネズミくらいの小ささで昆虫を主食としていた霊長類の祖先が、ヌクレオチドを豊富に含む昆虫をおいしく食べるのに役立っていたと考えられます。

 現在地球上には約500種類の霊長類がいます。そのうち、ワオキツネザル、ジェフロイクモザル、ブタオザル、チンパンジーなど、体が大きくなった一部の霊長類の旨味受容体は、葉に豊富に含まれるグルタミン酸に強く応答するよう進化したことがわかりました。これらの体が大きくなった霊長類は、昆虫では補え切れないタンパク質の量を確保するために、葉をたくさん食べるようになったと考えられています。本来、葉は苦くておいしくないはずですが、私たちの祖先が旨味受容体をヌクレオチドセンサーからグルタミン酸センサーへと変化させたことで、新たなタンパク質供給源として、葉をおいしく利用できるようになったと考えられます。

 本研究成果は、2021年8月27日に、国際学術誌「Current Biology」に掲載されました。
 

葉または昆虫を食べる霊長類の様子
図:体の大きな霊長類は葉を重要なタンパク質供給源として利用する((1)チンパンジー、(2)ニホンザル、(3)マントホエザル、(4)ワオキツネザル)。一方、小型の霊長類は昆虫を主なタンパク質供給源として利用する((5)バッタを食べるコモンマーモセット、(6)セミを食べるコモンリスザル)。
研究者情報
研究者名
糸井川壮大
書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.1016/j.cub.2021.08.002

【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/265528

Yasuka Toda, Takashi Hayakawa, Akihiro Itoigawa, Yosuke Kurihara, Tomoya Nakagita, Masahiro Hayashi, Ryuichi Ashino, Amanda D. Melin, Yoshiro Ishimaru, Shoji Kawamura, Hiroo Imai, Takumi Misaka (2021). Evolution of the primate glutamate taste sensor from a nucleotide sensor. Current Biology, 31(20), 4641-4649.