千島雄太 こころの未来研究センター・日本学術振興会特別研究員らの研究グループは、未来について考えることがネガティブ感情を軽減させるのではないかという仮説を立て、未来の自分を想像して手紙を書くことの効果を実験的に検証しました。
新型コロナウイルスの蔓延に伴って、人々のネガティブ感情が高まっていることが指摘されています。
本研究で使用したデータは、2020年4月13日~15日にオンラインで取得され、738名の実験参加者が1年後の自分へ手紙を書く「未来への手紙条件」、1年後の自分から現在に手紙を書く「未来からの手紙条件」、現在の生活についてのみを書く「統制条件」にランダムに割り当てられました。実験の前後では感情状態などの測定もしました。分析の結果、「未来への手紙条件」と「未来からの手紙条件」で同程度のネガティブ感情の減少が認められた一方、「統制条件」では大きな変化がありませんでした。さらに、この効果は、手紙を書くことで「現在の状態はずっとは続かない」という認識が高まったためであることがわかりました。今後、本研究グループは効果の持続性を検討するとともに、手紙を用いた介入プログラムなどを考案する予定です。
本研究成果は、2021年2月17日に、国際学術誌「Applied Psychology: Health and Well-Being」のオンライン版に掲載されました。
【DOI】 https://doi.org/10.1111/aphw.12256
【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/264442
Yuta Chishima, I-Ting Huai-Ching Liu, Anne E. Wilson (2021). Temporal distancing during the COVID-19 pandemic: Letter writing with future self can mitigate negative affect. Applied Psychology: Health and Well-Being, 13(2), 406-418.