黄錫永 工学研究科博士課程学生、バイ・イ 同助教、辻伸泰 同教授(兼・構造材料元素戦略研究拠点(ESISM)主任研究者)、朴明験 学際融合教育研究推進センター特定助教らは、兵庫県立大学、高輝度光科学研究センター(JASRI)の共同研究者とともに、高Mn鋼が変形時に示すセレーション挙動の原因を初めて解明しました。
セレーションとは、材料の応力-ひずみ曲線上に現れる鋸歯状の応力変動のことであり、炭素鋼の温間変形、Al-Mg合金、高Mn鋼の変形などで観察されます。セレーションは、結晶中の転位(dislocation)の運動と溶質原子の相互作用(動的ひずみ時効またはPortevin – Le Chatelier効果)によるものとされてきましたが、そうした原子スケールで生じる効果が、なぜ材料のマクロな変形挙動として現れるのかなど、不明な点が数多く残っていました。本研究では、デジタル画像相関(DIC)法による局所ひずみ解析と放射光X線回折法を引張変形中の高Mn鋼に適用することにより、試験片中にPLCバンドと呼ばれる局所変形帯の形成・伝播・消滅が繰り返し生じ、その挙動が応力-ひずみ曲線上のセレーションと完全に対応することを、リアルタイムで初めて明らかにしました。セレーションは金属材料の加工硬化率を向上させる一方、鋼の青熱脆性のような不安定破壊につながる場合もあることが知られており、本成果は高強度と高延性を示す安全な構造材料の変形挙動の理解と材料設計に重要な知見を与えるものです。
本研究成果は、2020年12月24日に、国際学術誌「Acta Materialia」に掲載されました。
【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.actamat.2020.116543
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/260582
Sukyoung Hwang, Myeong-heom Park, Yu Bai, Akinobu Shibata, Wenqi Mao, Hiroki Adachi, Masugu Sato, Nobuhiro Tsuji (2021). Mesoscopic nature of serration behavior in high-Mn austenitic steel. Acta Materialia, 205:116543.