曽田貞滋 理学研究科教授、京極大助 兵庫県立自然の博物館研究員は、繁殖をめぐる競争へのオスの適応進化が複数の機構を介して結果的にメスの産仔数を増加させることを、昆虫のアズキゾウムシを使った実験で明らかにしました。
主にオスが経験する性選択(繁殖機会をめぐる競争)は、進化の重要な原動力のひとつです。性選択により進化が起きることで生き物たちの性質が変わると、産仔数などの集団の増殖に関わる性質も変化することが期待されます。本研究では、実験室内で生物を人工的に進化させる実験進化と呼ばれる手法を昆虫のアズキゾウムシに適用し、性選択による進化が産仔数に与える影響を検証しました。その結果、性選択のもとではメスの産卵数、メスが生む卵の質、オスの射精物の質など、様々な形質が進化しました。中にはメスの産卵数を低下させるような性質の進化も認められましたが、全体として性選択は産仔数を増加させる効果を示しました。
性選択は分類群を問わず、広く有性生殖をする生物で見られる現象です。本研究結果は性選択が集団の生産性に与える影響の解明に広く貢献する重要な成果です。
本研究成果は、2020年12月13日に、国際科学誌「Journal of Evolutionary Biology」のオンライン版に掲載されました。
【DOI】 https://doi.org/10.1111/jeb.13753
Daisuke Kyogoku, Teiji Sota (2021). Sexual selection increased offspring production via evolution of male and female traits. Journal of Evolutionary Biology, 34(3), 501-511.