明和政子 教育学研究科教授、今福理博 武蔵野大学講師、福島宏器 関西大学教授、小池進介 東京大学准教授、中村優子 同特任助教の研究グループは、自分の身体の中の感覚に気づきやすい人ほど、表情模倣が起こりやすく、他人の視線にも敏感であることを解明しました。
私たちは「お腹が空いた」、「心臓がドキドキする」など、身体の中の感覚を感じて日常を過ごしています。このような感覚を「内受容感覚」と呼びます。内受容感覚には個人差があり、嬉しい、悲しいなど自分の感情の認識に重要な役割を果たすといわれています。しかし、内受容感覚の個人差が、自分ではなく他人の感情などの認識にどのように関わっているかは、よくわかっていませんでした。
このような背景から、本研究グループは、内受容感覚の敏感さと、他人の表情に対する自動的な表情模倣(例えば、他人の笑顔につられて笑う)の関連を調べました。日本人80名(15~57歳)を対象に、自分の心拍の活動をどれほど正確に感じられるかという点から「内受容感覚の正確性」を評価し、また、他人の笑顔を見ているときの「表情模倣の起こりやすさ」を評価して、両者の関連を調べました。その結果、内受容感覚(心拍知覚)が正確な人ほど、他人への自動的な表情模倣が起こりやすいことや、内受容感覚が正確な人ほど、他人と目を合わせる(アイコンタクトをする)ことによって、その人に対してより表情模倣をしやすくなるという新たな事実を発見しました。
本研究成果は、社会性に関わる表情模倣が、内受容感覚という身体の中の感覚への気づきやすさを基盤とする可能性を示し、「ヒトの社会性が身体に根差す」という仮説を支持するきわめて重要な知見です。
本研究成果は、2020年11月16日に、国際学術誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。
【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41598-020-76393-8
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/259352
Masahiro Imafuku, Hirokata Fukushima, Yuko Nakamura, Masako Myowa & Shinsuke Koike (2020). Interoception is associated with the impact of eye contact on spontaneous facial mimicry. Scientific Reports, 10:19866.