「繁殖様式の進化が特定の⽣息環境と⾏動を基盤に⽣じる」という仮説を発表 -なぜ直接⼦どもを産むトカゲは出現したのか-

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西川完途 地球環境学堂准教授、栗田隆気 千葉県立中央博物館研究員、児島庸介 東邦大学研究員、Mohamad Yazid Hossman マレーシア・サラワク州森林局研究員の研究グループは、インドから東アジアにかけて生息するトカゲの仲間について、生息環境、行動、繁殖様式の進化に関する研究を行い、「繁殖様式の進化が特定の生息環境と行動を基盤に生じている」という仮説を発表しました。

一般に爬虫類といえば卵を産む「卵生」のイメージがありますが、トカゲ・ヘビの仲間のおよそ20%は直接子供を産む「胎生」であることが知られています。今回の研究では、生態が多様で卵生種・胎生種の両方を含むトビトカゲ亜科に注目して、生息環境、動きの速さ、繁殖様式の3形質について進化の歴史を復元し、トビトカゲ亜科では卵生から胎生への進化が2回生じたことを明らかにしました。また、生息環境、動きの速さ、繁殖様式は独立ではなく関連して進化したことが示唆され、樹上性の傾向が強く、なおかつゆっくりとした動きしかできない種で、胎生が進化していることが明らかになりました。これまで樹上性の種では胎生への進化が起こりにくいと考えられていましたが、本研究では、ゆっくりと動くという生存戦略が介在することによって樹上性の種においても胎生化が生じうることを提唱しました。

本研究成果は、2020年8月13日に、国際学術誌「Systematics and Biodiversity」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究で⽤いたトビトカゲ亜科の⼀種

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1080/14772000.2020.1795741

Takaki Kurita, Yosuke Kojima, Mohamad Yazid Hossman & Kanto Nishikawa (2020). Phylogenetic position of a bizarre lizard Harpesaurus implies the co-evolution between arboreality, locomotion, and reproductive mode in Draconinae (Squamata: Agamidae). Systematics and Biodiversity, 18(7), 675-687.