わずかな粘度の違いを感じとる「羽ばたく蛍光分子」を開発 -ナノサイズの動きで液体のサラサラ度を測る-

ターゲット
公開日

齊藤尚平 理学研究科 准教授、木村僚 同修士課程学生、倉持光 理化学研究所 研究員、田原太平 同主任研究員らの研究グループは、わずかな粘度の違いを感じとる「羽ばたく蛍光分子」を開発しました。

目に見えないサイズの分子でも、うまく設計図を描けば人が立ったり座ったりするような面白い動きをするものが創れます。しかし、そういったナノメートルの世界における柔軟な分子骨格の動きを、日常生活において役立てるには工夫が必要です。

今回、本研究グループは、剛直な2つの翼を柔軟な関節でつなぎ合わせた「羽ばたく蛍光分子」を開発しました。この分子は、サラサラな液体のわずかな粘度の違いを局所的に感じとることができます。これにより、一般的な装置では測ることが難しい「不均一なものの粘度の分布」がわかります。強い光を照射しても劣化せず、最先端のレーザー顕微鏡を使ったイメージング技術に応用できます。今後は、接着剤やゼリーなどのゲル状物質のムラを蛍光で可視化したり、微量の血液の粘度を測定して診断に用いたりする手法の開発が期待できます。

本研究成果は、2020年6月12日に、国際学術誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究のイメージ図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1002/anie.202006198

Shohei Saito, Ryo Kimura, Hikaru Kuramochi, Pengpeng Liu, Takuya Yamakado, Atsuhiro Osuka, Tahei Tahara (2020). Flapping Peryleneimide as a Fluorogenic Dye with High Photostability and Strong Visible-Light Absorption. Angewandte Chemie International Edition, 59(38), 16430-16435.