辻本啓 医学研究科博士課程学生、笠原朋子 同 博士課程学生 (研究当時)、末田伸一 同 博士課程学生(研究当時) 、長船健二 iPS細胞研究所教授らの研究グループは、ヒトiPS細胞から後腎ネフロン前駆細胞(NP)と尿管芽(UB)それぞれに分化する培養システムを構築することに成功しました。
その後、培養皿上で糸球体、尿細管などのネフロンの特徴を持った組織と集合管を連結させたヒトの腎組織を作製することに初めて成功しました。更に、生体内において移植した腎組織が血管と繋がることを確認しました。
腎臓の主な働きは、血液をろ過し尿を作ることですが、その機能を担うのは腎臓の中のネフロンと呼ばれる組織です。ネフロンは、糸球体という毛細血管の塊から血液をろ過する構造とそこに繋がる尿細管で構成され、集合管と連結します。これまでの研究で、腎臓は主に2種類の腎前駆細胞であるNPとUBの相互作用により形成されることが分かっていましたが、ヒトiPS細胞から別個に分化誘導されたそれぞれの腎前駆細胞から腎組織を作製することは難しく、分化培養システムを構築する必要がありました。
本研究成果は、ヒト腎臓の発生生物学の新たな知見と腎臓疾患の仕組みの解明に繋がり、今後、腎臓の再生医療に向けた研究に大きく貢献できることが期待されます。
本研究成果は、2020年4月8日に、国際学術誌「Cell Reports」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.celrep.2020.03.040
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/250216
Hiraku Tsujimoto, Tomoko Kasahara, Shin-ichi Sueta, Toshikazu Araoka, Satoko Sakamoto, Chihiro Okada, Shin-ichi Mae, Taiki Nakajima, Natsumi Okamoto, Daisuke Taura, Makoto Nasu, Tatsuya Shimizu, Makoto Ryosaka, Zhongwei Li, Masakatsu Sone, Makoto Ikeya, Akira Watanabe, Kenji Osafune (2020). A Modular Differentiation System Maps Multiple Human Kidney Lineages from Pluripotent Stem Cells. Cell Reports, 31(1): 107476.
- 朝日新聞(4月8日 27面)および日刊工業新聞(4月8日 25面)に掲載されました。