中国のヤマカガシは頸腺毒の成分をホタルから摂取していたことを発見 -ヒキガエルからホタルへとかけ離れた種間で毒源が移行した-

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森哲 理学研究科 准教授、森直樹 農学研究科 教授らの研究グループは、 毒ヘビの一種であるイツウロコヤマカガシが 頸腺毒の成分をホタルから摂取していたことを発見しました。

毒ヘビのヤマカガシは、首の背面の皮下に猛毒を含む「頸腺」という器官を持ち、捕食者から身を守っています。この毒液の主成分は強心性ステロイドのブファジエノライド(bufadienolide)であり、ヤマカガシが捕食したヒキガエル由来の成分であることが知られています。この様な頸腺を持つヘビは世界中にヤマカガシ属17種で知られ、中国南西部にはその一種で、ミミズを捕食するイツウロコヤマカガシが生息しています。ミトコンドリアと核DNAによる分析から、ヤマカガシ属が進化する過程で、主食がカエルからミミズに変化したと推測されています。

本研究グループは、このイツウロコヤマカガシの頸腺を分析し、毒液の成分がホタルに由来するブファジエノライドの一種であることを同定しました。さらに、イツウロコヤマカガシが実際にホタルを捕食することを確認しました。これは、ヤマカガシ属内でイツウロコヤマカガシへ進化する過程で、カエル食からミミズ食へ食性が変化し、それに伴いブファジエノライド源としてヒキガエルではなくホタルを利用するようになったことを示します。このように系統的・生態的にかけ離れた餌へ毒源が移行する例は他になく、本研究成果は、ヘビの生態および動物の食性変化の研究に新たな視点を提供する画期的なものです。

本研究成果は、2020年2月25日に、国際学術誌「PNAS (米国科学アカデミー紀要) 」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概要図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1073/pnas.1919065117

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/245877

Tatsuya Yoshida, Rinako Ujiie, Alan H. Savitzky, Teppei Jono, Takato Inoue, Naoko Yoshinaga, Shunsuke Aburaya, Wataru Aoki, Hirohiko Takeuchi, Li Ding, Qin Chen, Chengquan Cao, Tein-Shun Tsai, Anslem de Silva, Dharshani Mahaulpatha, Tao Thien Nguyen, Yezhong Tang, Naoki Mori, and Akira Mori (2020). Dramatic dietary shift maintains sequestered toxins in chemically defended snakes. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 117(11), 5964-5969.

  • 朝日新聞(2月26日夕刊 7面)に掲載されました。