次世代天文学を拓く新型の宇宙線望遠鏡を開発 -極高エネルギー宇宙線で極限宇宙を観る-

ターゲット
公開日

藤井俊博 白眉センター特定助教らの研究グループは、極高エネルギー宇宙線による次世代の天文学「極高エネルギー宇宙線天文学」を切り拓くために、新型宇宙線望遠鏡を開発し、この新型望遠鏡3基を米国ユタ州に設置し、極高エネルギー宇宙線の観測に成功しました。

宇宙空間に存在する放射線は宇宙線と呼ばれ、1秒間に手のひらに約1個という頻度で地上に到来しています。これまでの観測で1年間に琵琶湖の面積に約1個というとても低い頻度ですが、莫大なエネルギー(10の20乗電子ボルト)を有する極高エネルギー宇宙線の存在が明らかになりました。このエネルギーは、世界最大の粒子加速器での到達エネルギーより7桁も大きく、宇宙のどこかに爆発的なエネルギーを生み出す発生源があると考えられています。また、極高エネルギー宇宙線は宇宙磁場の中をほぼ直進し、その到来方向が発生源を指し示すことから、極限宇宙を観るための次世代の天文学として注目されています。

今回開発された望遠鏡は、極高エネルギー宇宙線の観測に特化した低コスト型の設計で、遠隔操作により自動的に観測を行うことが可能です。これにより、この望遠鏡を等間隔に並べて、従来より1桁大きい範囲に到来する極高エネルギー宇宙線を観測するという将来計画を実現することが期待されます。また、この望遠鏡は稼働中の宇宙線観測装置の測定結果を検証するためにも使用されます。

本研究成果は、2020年1月23日に、国際学術誌「Astroparticle Physics」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究のイメージ図(Image credit:Ryuunosuke Takeshige and Toshihiro Fujii (Kyoto University))

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.astropartphys.2020.102430

M. Malacari, J. Farmer, T. Fujii, J. Albury, J. A. Bellido, L. Chytka, P. Hamal, P. Horvath, M. Hrabovský, D. Mandat, J. N. Matthews, L. Nozka, M. Palatka, M. Pech, P. Privitera, P. Schovánek, R. Šmída, S. B. Thomas, P. Travnicek (2020). The first full-scale prototypes of the fluorescence detector array of single-pixel telescopes. Astroparticle Physics, 119:102430.