高橋義朗 理学研究科教授、田家慎太郎 同博士研究員らの研究グループは、「空間断熱移送」を質量を持った粒子で初めて実現しました。
量子力学で最も根本的な考え方の一つに、物質も波の性質を持つとすることが挙げられます。波の基本的な性質は、互いに重なり合って強めあったり打ち消しあったりする干渉効果です。この効果は真っ直ぐにつながった3つの容器の中の粒子でも見ることができます。3つの容器の間の遷移確率を上手くコントロールすると、干渉によって粒子が中央の容器には姿を現すことなく端から端へと飛び移る不思議な現象が起こります。この現象が 空間断熱移送と呼ばれています。
本研究は、レーザー光がつくる規則正しい格子パターンに原子を閉じ込める「光格子」を用いることで遷移確率を精密に制御し、格子点の間の空間断熱移送を観測することに成功しました。この過程で実現される状態は磁石の力の源になる強磁性とも深く関わっており、この成果が物質の謎を解き明かす足掛かりになることが期待されます。
本研究成果は、2020年1月17日に、国際学術誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41467-019-14165-3
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/245415
Shintaro Taie, Tomohiro Ichinose, Hideki Ozawa & Yoshiro Takahashi (2020). Spatial adiabatic passage of massive quantum particles in an optical Lieb lattice. Nature Communications, 11:257.
- 日刊工業新聞(2月4日 23面)に掲載されました。