褐色を呈する光化学系 II -集光性色素タンパク質複合体の立体構造を解明 -光合成生物の進化と多様化を解明する糸口に-

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伊福健太郎 生命科学研究科 助教、長尾遼 岡山大学 特任助教、加藤公児 同特任准教授、秋田総理 同准教授、沈建仁 同教授、宮崎直幸 大阪大学 助教(現・筑波大学助教)らの研究グループは、理化学研究所、兵庫県立大学、基礎生物学研究所、神戸大学と共同で、クライオ電子顕微鏡を用いて、海産性珪藻の光化学系 II -集光性色素タンパク質複合体( 光化学系 II - FCP複合体 )の立体構造解析に成功し、珪藻特有の色素組成とその並び方を明らかにしました。そして、本結果によって、水中で太陽光エネルギーを効率よく収集・逸散する仕組みや、光合成生物が多様な環境に応じて集光性色素タンパク質を進化させてきた仕組みが明らかになりました。

本研究成果は、「なぜ光合成生物は多様な色を持ち、さまざまな場所に生育できるのか?」という問いに対する答えを与え、光合成生物の進化と多様化の謎を紐解く知見となり、絶えず変動する太陽光エネルギーの効率的・選択的な利用を目指した人工デバイスの創出についても重要な知見を提供するものです。

本研究成果は、2019年7月30日に、国際学術誌「Nature Plants」のオンライン版に掲載されました。

図:珪藻の光化学系 II -FCP複合体の全体構造 (A)と 色素分子の配置 (B)

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41477-019-0477-x

Ryo Nagao, Koji Kato, Takehiro Suzuki, Kentaro Ifuku, Ikuo Uchiyama, Yasuhiro Kashino, Naoshi Dohmae, Seiji Akimoto, Jian-Ren Shen, Naoyuki Miyazaki & Fusamichi Akita (2019). Structural basis for energy harvesting and dissipation in a diatom PSII-FCPII supercomplex. Nature Plants, 5(8), 890-901.