石濱泰 薬学研究科 教授、杉山直幸 同准教授らの研究グループは、ヒトの全タンパク質キナーゼのおよそ70%について、試験管内( in vitro )で細胞破砕物とリン酸化反応を行い、質量分析を用いてリン酸化されたタンパク質とその修飾部位の同定を行った結果、 大規模な in vitro 基質情報を得ることに成功しました。
生体内では生命現象の維持のために様々な情報伝達が行われています。タンパク質のリン酸化修飾は細胞内のシグナル伝達にとって最も重要なメカニズムの一つで、様々な生命現象のみならず、がんなどの疾病発症とも深く関連しています。ヒトの場合、500種類以上のタンパク質リン酸化酵素(キナーゼ)が存在すると考えられていますが、多くのキナーゼについては詳細な機能がほとんど分かっていません。
本研究で得られた大規模な in vitro 基質情報は、今まで報告されていたキナーゼの基質情報をはるかに上回るものであり、細胞内シグナル伝達の全貌を解明したり、キナーゼを標的とする抗がん剤などの創薬を行ったりする上で有用なデータソースとなることが期待されます。
本研究成果は、2019年7月19日に、国際学術誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41598-019-46385-4
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/244139
Naoyuki Sugiyama, Haruna Imamura & Yasushi Ishihama (2019). Large-scale Discovery of Substrates of the Human Kinome. Scientific Reports, 9:10503.