内田由紀子 こころの未来研究センター准教授らの研究グループは、日本の特徴とされる「協調性」が、非農家も含めて農業地域全体で高いことを、西日本の408集落7295名への調査から解明し、その原因の一端が農業地域における「地域活動」への高い参加率にあることを実証しました。
本研究成果は、2018年11月2日に、米国の学術誌「Journal of Personality and Social Psychology」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
長い時間をかけて実施した調査で、多くの機関、多くの研究者、そして何より多くの地域の皆様方のご協力を得て、これだけの大規模な調査を実現することができました。文化と心の関係性を解き明かす新たな一歩となればと願っています。
概要
日本では他者の評価を気にかけたり、調和を重視するような「相互協調性」が高いとされますが、その主なルーツが「農業に従事すること」にあるのか「農業地域に暮らすこと」にあるのかは不明でした。
そこで本研究グループは、西日本から農業地域、漁業地域、それ以外の地域からサンプリングされた408集落を対象にした住民調査を実施しました。その結果、協調性は、農業地域全体(非農業者を含む)でそのほかの地域よりも高いという傾向が見られました。
また、農業地域全体でなぜ協調性が高くなるのかを検討したところ、農業地域ではほかの地域よりもお祭り・自治会活動・冠婚葬祭などの「地域活動」の参加率が高いために、協調性が促進されていることが示されました。その背景には、水田稲作が盛んな農業地域では、歴史的に地域住民の大規模な協力関係が必要とされ、それが地域の伝統となって現在に受け継がれたことがあると考えられます。
本研究成果は、今後の文化心理学研究の理論や方法について新たな知見を与え、また、特に農村や漁村地域でのデータ収集が行われたことなどからも、これまでは主に国際比較が行われてきた本研究分野における地域比較の有効性の証左としての波及効果があると考えられます。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1037/pspa0000138
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/234964
Yukiko Uchida, Kosuke Takemura, Shintaro Fukushima, Izuru Saizen, Yuta Kawamura, Hidefumi Hitokoto, Naoko Koizumi, Sakiko Yoshikawa (2018). Farming cultivates a community-level shared culture through collective activities: Examining contextual effects with multilevel analyses. Journal of Personality and Social Psychology, 116(1), 1-14.