安井康夫 農学研究科助教、岩田洋佳 東京大学准教授、矢部志央理 同博士課程学生らと、筑波大学およびトヨタ自動車株式会社の研究グループは、大量のDNAマーカー情報から特性を予測して選抜を行う「ゲノミックセレクション」により、他殖性作物の1つである普通ソバの収量性を短期間で増加させることに成功しました。
本研究成果は、2018年5月21日に米国の科学誌「Frontiers in Plant Science」のオンライン版に掲載されました。
研究者からのコメント
他殖性作物の集団選抜においてゲノミックセレクションが有効であることが示されたため、今後、育種により時間や労力がかかる他の他殖性作物の選抜にゲノミックセレクションを用いることができる可能性があります。
今後は、今回改良した普通ソバの集団を圃場で栽培し、通常の栽培環境でも期待されたような収量が得られるか確認する予定です。また、特性の評価方法や予測モデルを改良することで、選抜法のさらなる効率化を進めていきます。
概要
近年、作物の品種改良では、注目を集めていた「ゲノミックセレクション」ですが、多くの他殖性作物を選抜する方法として使われている集団選抜法においては、その有効性はわかっていませんでした。
本研究グループは、ゲノミックセレクションにより他殖性作物の1つである普通ソバの収量性を、3年間という短い期間で20.9%増加させることに成功しました。この結果、ゲノミックセレクションを利用すれば、普通ソバのような他殖性作物の集団選抜法を用いた育種が効率的に行えることが明らかになりました。今後、ゲノミックセレクションを活用することで、今までは改良に多大な時間と労力がかかっていた、他殖性作物の収量性についての品種改良の効率化・高速化が期待されます。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.3389/fpls.2018.00276
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/231972
Shiori Yabe, Takashi Hara, Mariko Ueno, Hiroyuki Enoki, Tatsuro Kimura, Satoru Nishimura, Yasuo Yasui, Ryo Ohsawa, Hiroyoshi Iwata (2018). Potential of Genomic Selection in Mass Selection Breeding of an Allogamous Crop: An Empirical Study to Increase Yield of Common Buckwheat. Frontiers in Plant Science, 9, 276.