末盛博文 ウイルス・再生医科学研究所准教授、川瀬栄八郎 同特定講師、高田圭 同技術主任らの研究グループは、 医療法人財団足立病院より提供を受けた凍結胚を用いて、ウイルス・再生医科学研究所胚性幹細胞分野に設置されたヒトES細胞専用の細胞処理施設(Cell Processing Facility:CPF) での臨床用ヒト ES 細胞株の樹立に、国内で初めて成功しました。
研究者からのコメント
左から、末盛准教授、川瀬特定講師、高田技術主任、畑山博 足立病院長、中山貴弘 同副院長
多能性幹細胞を用いた細胞移植医療においてiPS細胞に加え、このたび樹立に成功した臨床用ヒトES細胞を新たな選択肢として比較検討を進めることで、再生医療の安全性・有効性の向上に寄与することが期待されます。
そのために、まず使用研究機関においてES細胞の性質等を検討し、臨床利用を実施する研究機関に対して臨床用ストックを分配する、という流れを想定しています。
概要
ウイルス・再生研では、2003年に日本ではじめてヒトES細胞株の樹立に成功しました。その後これまでにヒトES細胞株を5株樹立し、多数の使用研究機関に分配することによって、我が国の幹細胞研究に寄与してきました。世界的にはヒトES細胞を用いた治験が開始されて安全性や有効性の確認が進められており、我が国においても臨床応用使用可能なヒトES細胞株の樹立が必要と考えられています。ウイルス・再生研では、これを実現するため、Cell Processing Facility(CPF)の設置、品質管理体系の構築、動物由来成分を排除した培養システムの技術開発を進めてきましたが、本研究グループはCPFでの臨床用ヒトES細胞株の樹立に、国内で初めて成功しました。本施設で今後作製するストックは国立成育医療研究センターなどに配布し、臨床応用を目指した研究に使用していく予定です。
詳しい研究内容について
書誌情報
- 朝日新聞(5月22日夕刊 1面)、京都新聞(5月22日夕刊 8面)、産経新聞(5月22日夕刊 1面)、中日新聞(5月22日夕刊 10面)、日刊工業新聞(5月23日 29面)、日本経済新聞(5月22日夕刊 1面)、毎日新聞(5月23日 4面)および読売新聞(5月22日夕刊 9面)に掲載されました。