アンモニア水とアルコールから第一級アミンを効率的に合成する触媒系を開発

ターゲット
公開日

藤田健一 人間・環境学研究科教授らの研究グループは、アンモニア水とアルコールを原料として用い、新しく開発したイリジウム錯体を触媒として用いることで、合成化学的価値の高い第一級アミンを効率的に合成できる触媒系の開発に成功しました。

本研究成果は、2018年3月5日に「ChemCatChem」にオンライン掲載されました。

研究者からのコメント

高性能な有機金属錯体触媒を活用し、環境に優しいものづくりを可能にする触媒反応を開発することは、現代の化学研究における最も重要なことの一つであり、世界中の研究者が取り組んでいます。しかし、ほとんどの錯体触媒は、水に対して不安定であったり、水にはまったく溶解しないものであったり、実用面での課題を多く抱えています。本研究で開発した触媒は、これらの課題をクリアしていることに特徴があり、実用性の高い触媒としての期待が大きいと考えられます。今後、水溶媒中で行う有機合成反応の研究に多くの研究者が取り組むようになり、環境に優しいものづくりがさらなる発展を遂げることが期待されます。

概要

第一級アミンは、医薬、農薬、機能性材料、樹脂合成のための中間原料として広範に用いられています。したがって、取り扱いづらい原料を使わず、有害な副生成物を生み出さない第一級アミン合成の手法を開発することには、大きな価値があるといえます。特に、アンモニア水とアルコールの反応によって第一級アミンを触媒的に合成できれば、目的生成物以外に副生するのは無害の水のみとなり、環境調和性や原子効率に優れた合成手法となるため、非常に望ましいと考えられます。

本研究グループは、アンモニア水とアルコールを原料として用い、新しく開発したイリジウム錯体を触媒として用いることによって、上記の課題を解決する新しい触媒系の開発に成功しました。今回開発したイリジウム触媒は、立体的に嵩高く、高い電子供与性を持った含窒素複素環カルベン(NHC)という配位子を持っていることが大きな特徴です。そして、この新しいイリジウム触媒は、イオン性であるため水にとても溶けやすく、なおかつ空気中で安定なため取り扱いやすいという特徴もあります。

このイリジウム触媒を用いることによって、アンモニア水とアルコールの反応が良好に進行するようになり、最高収率89%で第一級アミンを合成することが可能になりました。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1002/cctc.201702037

Ken-ichi Fujita, Shohichi Furukawa, Namino Morishima, Mineyuki Shimizu, Ryohei Yamaguchi (2018). N-Alkylation of Aqueous Ammonia with Alcohols Leading to Primary Amines Catalyzed by Water-Soluble N-Heterocyclic Carbene Complexes of Iridium. ChemCatChem, 10(9), 1993-1997.

  • 日刊工業新聞(3月8日 22面)および化学工業日報(3月12日)に掲載されました。