福澤秀哉 生命科学研究科教授、山野隆志 同助教、松尾拓哉 名古屋大学講師、石浦正寛 同名誉教授らの研究グループは、緑藻において体内時計をリセットする赤や紫の光情報の伝達経路の構成因子を、世界で初めて明らかにしました。
本研究成果は、2017年3月24日午前4時に米国の科学雑誌「PLOS Genetics」に掲載されました。
研究者からのコメント
本研究は、緑藻における赤や紫の光情報の伝達経路の構成因子を、世界で初めて明らかにした研究です。この成果は、今後、新しい光センサーの発見や、体内時計の調節を介した藻類バイオ燃料の増産につながる可能性があります。
本研究成果のポイント
- 緑藻の体内時計のリセットに関わる光情報伝達因子を発見
- 緑藻において赤と紫の光情報の伝達に関わる因子の発見は世界初
- 新しい光センサーの発見につながる可能性
- 体内時計の調節を介したバイオ燃料の増産につながる可能性
概要
緑藻は、私たちと同じように体内時計を持っています。また、その時計は光を浴びることでリセットされます。しかし、光の情報がどのように体内時計に伝えられるのかはわかっていませんでした。
本研究グループは、多数の遺伝子変異体を解析し、体内時計のリセットがうまくいかない変異体を分離することに成功しました。さらに詳細な解析の結果、赤や紫の光によるリセットがうまくいかないことを明らかにしました。この変異体の遺伝子を解析した結果、これまでに緑藻で全く研究されていなかった遺伝子に変異を持つことを突き止め、この遺伝子を CSL と命名しました。
図:(A)クラミドモナスの写真。直径10μm程の単細胞生物
(B)各波長の光に対するROC15の分解。野生型では紫色光(410nm)や赤色光(660nm)で強く分解が起こるが、今回発見した変異体では赤色光に対する分解は完全に消失しており、紫色光に対する分解は弱くなっていた。
(C)今回の成果の概略図。赤色光や紫色光は、青色光とは異なる経路で体内時計に伝達されることがわかった。また、赤/紫色光経路には CSL が関与していることがわかった。
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】 https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1006645
【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/219100
Ayumi Kinoshita, Yoshimi Niwa, Kiyoshi Onai, Takashi Yamano, Hideya Fukuzawa, Masahiro Ishiura, Takuya Matsuo. (2017). CSL encodes a leucine-rich-repeat protein implicated in red/violet light signaling to the circadian clock in Chlamydomonas. PLOS Genetics, 13(3): e1006645.
- 科学新聞(4月7日 2面)に掲載されました。