国奥広伸 工学研究科博士課程学生、東正信 同助教、阿部竜 同教授は、新たに開発した低温合成法を用いて、可視光から近赤外光まで光吸収が連続的に変化するビスマス系カルコハライドを合成しこれらが太陽電池材料として有望な性質を示すことを実証しました。
本研究成果は2016年9月7日、「Scientific Reports」に掲載されました。
研究者からのコメント
これまで太陽電池などへの応用が期待されながらも、その合成が難しかったビスマス系カルコハライドを、室温で合成したビスマスオキシハライドを原料に用いることによって、驚くほど低温かつ短時間で合成できることを世界で初めて見出しました。この合成法をビスマス系以外の金属系に展開することによって、これまで合成例が無いカルコハライドの新規合成にも繋がる可能性を有しており、太陽電池や発光ダイオードに用いる光機能性材料のライブラリー拡大に貢献できるものと考えています。
概要
化石資源の大量消費による環境汚染や将来の資源枯渇への懸念から、太陽光エネルギーの利用拡大が期待され、安価な次世代型太陽電池の研究開発が活発に進められています。ビスマスなどの金属と硫黄(またはセレン)およびハロゲンからなる金属カルコハライドは、光吸収特性を連続的に制御することが可能であり、かつ希少な元素を含まないことから、次世代の太陽電池や発光ダイオード用材料として期待されています。しかし合成が困難なため、これまで応用展開が大きく妨げられていました。
本研究では、可視光から近赤外光まで光吸収が連続的に変化するビスマス系カルコハライドを低温で合成できる全く新規な手法を開発し、これらが太陽電池材料として有望な性質を示すことを実証しました。
また、本研究で開発した新規低温合成法は、ビスマス系のみならずさまざまな金属カルコハライドの合成に適用できる可能性を有しており、さらに150℃程度の低温で反応が進行することや光吸収の連続制御が可能なことから、プラスチック基板などと組み合わせたフレキシブル太陽電池や、吸収が連続的に変化する発光ダイオードの開発などに繋がることが期待されます。
図:ビスマス系カルコハライドの光吸収と想定される応用例
詳しい研究内容について
書誌情報
【DOI】
http://dx.doi.org/10.1038/srep32664
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/216541
Hironobu Kunioku, Masanobu Higashi & Ryu Abe. (2016). Low-Temperature Synthesis of Bismuth Chalcohalides: Candidate Photovoltaic Materials with Easily, Continuously Controllable Band gap. Scientific Reports, 6: 32664.
- 京都新聞(9月8日 23面)、日刊工業新聞(9月20日 17面)に掲載されました。