血糖調節の新たなメカニズムの解明

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西英一郎 医学研究科特定准教授、西清人 同研究員らの研究グループは、ナルディライジンというタンパク質が、血糖上昇時のインスリン分泌に不可欠であり、血糖値を一定の範囲に維持するために重要な働きを担っていることを明らかにしました。

本研究成果は2016年7月6日(米国時間)に米国糖尿病学会の学術誌「Diabetes」に掲載されました。

研究者からのコメント

左から、西英一郎特定准教授、西清人研究員

本研究により、ナルディライジンが膵β細胞の機能や分化を制御することを明らかにしました。今後は糖尿病におけるナルディライジンの役割をさらに解明したいと考えています。一方、iPS細胞などの幹細胞から膵β細胞を作製して移植することが、糖尿病の理想的な治療法となる可能性があり、世界中で研究が進められています。本研究の成果は、ナルディライジンの発現を上昇させることで膵β細胞の機能が改善することも示しており、高品質な膵β細胞の作製につながる可能性もあると考えています。

概要

三大栄養素のひとつである炭水化物は、消化によって最終的にグルコース(ブドウ糖)などの単糖類に分解されて腸管から吸収されます。グルコースは生物にとって必要不可欠な栄養素ですから、血中グルコース濃度(血糖値)は、常に一定の範囲内に収まるように厳密な調節を受けます。この調節を司るのが、膵島より分泌される血糖調節ホルモン(インスリン、グルカゴン)です。

膵島(ランゲルハンス島)は、膵臓に「島」の様に点在しており、約80%がβ細胞、約15%がα細胞で占められています。血糖の上昇を感知するとβ細胞からインスリンが、血糖の低下を感知するとα細胞からグルカゴンが、それぞれ分泌され、肝臓、筋肉、脂肪組織などにグルコースの取り込みや放出を促すことで血糖値を一定の範囲内に保ちます。

糖尿病は血糖値が高くなる病気ですが、血糖調節ホルモンのバランスが崩れていること、特に血糖上昇時にインスリンが充分分泌されないことが主たる原因の一つと考えられています。

本研究グループは、ナルディライジンが全身で欠損したマウスを作製して、グルコースを投与する負荷試験を行ったり、膵島の遺伝子発現を調べるなどし、膵β細胞のナルディライジンがインスリンとグルカゴンの分泌をコントロールし、血糖値を一定の範囲内に保つことに必須であることを明らかにしました。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】
http://dx.doi.org/10.2337/db16-0178

Kiyoto Nishi, Yuichi Sato, Mikiko Ohno, Yoshinori Hiraoka, Sayaka Saijo, Jiro Sakamoto, Po-Min Chen, Yusuke Morita, Shintaro Matsuda, Kanako Iwasaki, Kazu Sugizaki, Norio Harada, Yoshiko Mukumoto, Hiroshi Kiyonari, Kenichiro Furuyama, Yoshiya Kawaguchi, Shinji Uemoto, Toru Kita, Nobuya Inagaki, Takeshi Kimura, Eiichiro Nishi. (2016). Nardilysin is Required for maintaining Pancreatic β-Cell Function. Diabetes.