ナノバブルのおしくらまんじゅうを初めて観測-新規材料創製への応用に期待-

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中嶋隆 エネルギー理工学研究所准教授および作花哲夫 工学研究科教授らの研究グループは、腫瘍細胞の破壊、バイオセンサーなどで応用が期待されるナノ粒子が、水溶液中にある際にレーザー加熱によって生じるナノバブルの成長がナノ粒子の数密度(ナノ粒子間距離)によって異なるという新現象を発見しました。

本研究成果は2016年6月29日に「Scientific Reports」誌に掲載されました。

研究者からのコメント

従来の理論モデルでは、レーザー照射ナノバブルの成長は数密度には無関係であり、従って、ナノバブル内の温度と圧力は独立に制御できないと考えられていましたが、本研究成果は、バブル内の温度と圧力をある程度独立に制御できることを示しています。ナノバブル内には、溶液およびナノ粒子双方の構成物質が気体や溶融体として混在するので、これらを制御された温度及び圧力下で加熱・凝縮させることにより、新たな材料を創製できると期待されます。

本研究成果のポイント

  • 水溶液中ナノ粒子のレーザー加熱によって生じるナノバブルの成長がナノ粒子の数密度(ナノ粒子間距離)によって異なる、という新現象を発見
  • 圧力波がナノバブルの成長を抑制する、という新しい考え方でこの現象を説明
  • 新規材料を創製する「場」としてのナノバブルの応用への期待

概要

多くの場合、ナノ粒子は液体環境で使用され、ナノ粒子の光学応答が重要な役割を果たします。また、液体中の固体表面にレーザーを集光照射するというナノ粒子の液中作成法においても、生成直後のナノ粒子はレーザーと相互作用し、その性質が変わってしまうため、ナノ粒子の光学応答を正しく理解する必要があります。

しかしながら、これまでの研究は、レーザーフルエンスやパルス照射回数、波長などのパラメータに注目した研究がほとんどで、ナノ粒子の数密度には全く注意が払われていませんでした。

本研究は、単純に、どのくらい低い数密度であればナノ粒子は孤立していると考えて良いのか、という問いかけから始まり、レーザー照射によって発生するナノバブルを注意深く観察したところ、既存の理論モデルでは説明できない数密度依存のナノバブル成長を発見しました。

図:レーザー照射後のナノバブルの成長

詳しい研究内容について

書誌情報


【DOI】
http://dx.doi.org/10.1038/srep28667


【KURENAI】
http://hdl.handle.net/2433/215840


Takashi Nakajima, Xiaolong Wang, Souvik Chatterjee & Tetsuo Sakka. (2016). Observation of number-density-dependent growth of plasmonic nanobubbles. Scientific Reports, 6:28667.