石濱泰 薬学研究科教授、五斗進 化学研究所准教授、吉沢明康 化学研究所特定研究員らの研究グループは、生体中に存在する各種タンパク質のすべてを指すプロテオームのアジア・オセアニア地域で初となる総合データベースを開発・公開しました。
研究者からのコメント
このデータベースは、タンパク質はもちろん、他の生命科学系データベースとの統合も念頭に入れて設計したもので、ユーザーに入力してもらう属性情報を用いて、ゲノムデータベースや遺伝子発現データベースなど複数のデータベースを横断した検索が可能になる予定です。国内外のデータベースと連携し、サイエンスの進歩に貢献する世界的なデータベースとなることを期待しております。
概要
現在、「発現しているすべてのタンパク質」を意味するプロテオームは特に「生命活動を直接担う」分子群であることから、創薬分野を中心に大きな注目を集め、さまざまな大型研究が行われてきました。得られたデータは、データベースの形で欧米を中心に各地で蓄積されていますが、次の二つの問題がありました。
- フォーマットや解析法、信頼度評価法の異なる研究機関・プロジェクトからデータを大規模に収集した結果、信頼性には多くの批判が向けられている。
- 通信速度が遅く、データサイズによっては、日本からアップロードするのに1週間以上かかる場合もあった。
そこで、これらの問題を解決すべく、2015年から本学を中心としたオールジャパン体制で、国産プロテオーム統合データベースとして、jPOST(Japan ProteOme STandard Repository/Database)の開発を開始しました。 jPOSTは「解析結果」ではなく、「測定データ」を収集し、適切な方法で測定データを標準化(再解析)して、独自に解析するので、より統一された信頼できるデータを提供することができます(図)。また、ファイル送信方式を新たに開発し、既存のリポジトリと比較して、10倍以上の高速化を実現しました。
今後、アジアを中心に世界中のプロテオームデータをjPOSTに収集することが可能となります。また、欧米のプロテオームデータのリポジトリシステム連合体である、PXC(ProteomeXchangeコンソーシアム)に加盟することにより、jPOSTリポジトリにアップロードされたデータのみならず、他のPXC加盟リポジトリに登録されたデータも、シームレスに再解析に利用できるようになります。
図:jPOSTの構成とデータの流れ
詳しい研究内容について
- 京都新聞(5月11日 25面) に掲載されました。