John Philip MATTHEWS 国際高等教育院教授、淡路敏之 名誉教授および増田周平 国立研究開発法人海洋研究開発機構地球環境観測研究開発センター海洋循環研究グループリーダーらは、力学解析に基づいたエルニーニョ現象の新しい予測手法を考案しました。
本研究成果は、Scientific Reports誌に11月25日付け(日本時間)で掲載されました。
研究者からのコメント
ここで注目した「異なる時間スケール間の相互作用」の実態に迫ることでエルニーニョ現象のメカニズム解明、予測精度の向上に大きく資し、将来的には漁業、農業、防災等の多分野において社会経済活動への貢献が期待されます。
概要
猛暑や旱魃、豪雨など社会的に影響の大きな異常気象を各地で引き起こすエルニーニョ現象の精度の高い予測方法の開発は、世界的に強く要請されている課題です。
この課題の解決に向け、データ同化技術を駆使し地球シミュレータによって作成された大気海洋環境再現データセットを用いて、大気―海洋間で交換されるエネルギー(海上風が海面を通じて水を動かす仕事量)のうち、エルニーニョ現象の発達・減衰に重要な役割をはたす要素を再評価しました。その結果、その要素は年によって異なる季節変化を示し、5年から10年の時間間隔でエネルギー交換の振幅が変動していることが分かりました。
この解析結果をもとに、これまで直接エルニーニョ予測において考慮に入れられていなかった5年から10年スケールのエネルギー交換の長期変動の影響を大気・海洋結合モデルに組み込みました。そして、過去のエルニーニョ現象に関する実証実験を地球シミュレータで行った結果、これまで難しいとされてきた「春先にその年のエルニーニョ現象を予測する精度」を大幅に向上させられることが明らかになりました。これは、エルニーニョ現象のメカニズム解明、予測精度向上に新たな可能性を示す成果です。
詳しい研究内容について
書誌情報
[DOI] http://dx.doi.org/10.1038/srep16782
[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/202935
Shuhei Masuda, John Philip Matthews, Yoichi Ishikawa, Takashi Mochizuki, Yuusuke Tanaka & Toshiyuki Awaji
"A new Approach to El Niño Prediction beyond the Spring Season"
Scientific Reports 5, Article number: 16782 Published online: 25 November 2015