2014年6月12日
幸島司郎 野生動物研究センター長/教授と植田彩容子 同センター教務補佐員らの研究グループは、イヌ科動物の顔の色彩パターンと、同種の仲間を見つめる時間の長さなどを比較することによって、オオカミ(ハイイロオオカミ)が視線を使って仲間とコミュニケーションしている可能性が高いことを明らかにしました。これまで動物の顔の色彩が持つ役割を明らかにする研究は少なく、イヌ科動物では初の試みでした。
本研究成果は、米国科学誌「PLOS ONE」(電子版)(日本時間2014年6月12日)に公開されます。
研究者からのコメント
私たちは、イヌ科動物、特にオオカミに興味を持ち、その生き物がどんな性質であるかを理解しようしています。この知見はたとえばイヌのような、身近な動物が見せる行動の意味を理解するために役立つ研究でもあります。
今回の研究は、視線の目立つイヌ科動物、特にオオカミにおける視線の役割について考察するものですが、イヌ科動物の比較によって、彼らのコミュニケーション行動への興味がさらに掻き立てられました。
本研究成果を踏まえ、実際にオオカミがどのようにして視線を使ってコミュニケーションしているかを解析することはもちろん、イヌ科動物がどんな行動をし、何を伝え合っているのかを研究していくのが楽しみです。
概要
なぜ私たちはオオカミの目は鋭くて怖い、と感じてしまうのでしょう?
オオカミの目は、明るい色の虹彩の真ん中に黒い瞳孔が浮かぶ目玉マークにようになっているので、それが私たちの方へ向けられると、目を見開いてじっと見つめられているように感じるからです。しかしなぜ、このような「視線」がわかりやすい目をしているのでしょうか。本研究グループは、彼らが視線をコミュニケーションに使っているのではないかと考え、イヌ科動物の顔の色彩パターンと仲間をみつめる行動などを比較しました。
その結果、オオカミのような視線を目立たせる色彩パターンのイヌ科動物は、視線を使って仲間とコミュニケーションしている可能性が高いことがわかりました。
詳しい研究内容について
オオカミは目で語る? -視線を使ったコミュニケーションの可能性-
書誌情報
[DOI] http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0098217
[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/187941
Sayoko Ueda, Gaku Kumagai, Yusuke Otaki, Shinya Yamaguchi, Shiro Kohshima
"A Comparison of Facial Color Pattern and Gazing Behavior in Canid Species Suggests Gaze Communication in Gray Wolves (Canis lupus)"
PLOS ONE 9(6): e98217 Published: June 11, 2014
掲載情報
- 京都新聞(6月12日夕刊 1面)、産経新聞(7月9日 23面)、中日新聞(6月12日夕刊 10面)、日本経済新聞(6月12日夕刊 14面)、毎日新聞(6月12日夕刊 10面)および読売新聞(7月28日 17面)に掲載されました。