2014年4月25日
前田啓一 理学研究科准教授、ロバート・クインビー 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構特任研究員らの研究チームは、星が一生を終えるときに爆発して明るく輝く「超新星」が、通常の30倍の明るさで輝いた現象のしくみを解明しました。
本研究成果が、米国科学誌 「Science」の2014年4月25日号に掲載されました。
研究者からのコメント
Ia型超新星の研究は、その性質や爆発機構の研究、宇宙論への応用の二つの柱があり、この二つが密接に関係しながら進んでいます。本研究では、宇宙遠方で発生した超新星が新種の現象ではなく既知のIa型超新星であると判明したことが前者の意味で重要です。重力レンズ効果とIa型超新星という、これまで独立に使われていた宇宙論手法を合わせたより強力な宇宙論研究の可能性を開いたということで、後者の意味で重要です。
将来、重力レンズ現象で輝きを増したIa型超新星が見つかった時に、高解像度の望遠鏡を使って追加観測を行えば、像を分離して観測できるでしょう。私たちが築き上げた検出、選別方法を用い、重力レンズ効果で明るく輝く超新星を多数観測することで、近い将来、宇宙膨張の理解がさらに進むことが期待されます。重力レンズ効果を使い、直接宇宙膨張の様子を測ることができるようになります。また、本文中ではほとんど触れていませんが、重力レンズ効果により再遠方のIa型超新星がとらえられるはずであり、どこまで遠方で(宇宙初期で)Ia型超新星が発生し得るかを突き止めることで、爆発にいたる星の進化や爆発機構といった未解決問題の解明につながり得ると期待しています。
概要
さまざまなタイプの超新星のうち、Ia型とよばれる超新星は、爆発の規模がほぼ同じで、ピーク時の明るさもよく揃っている、「宇宙の標準光源」とも呼ばれる性質を持っています。宇宙のさまざまな場所で発生したIa型超新星を観測し、宇宙の加速膨張を発見した二つの研究グループが2011年のノーベル物理学賞に輝くなど、Ia型超新星は宇宙の歴史と未来を知る上で重要な役割を果たしています。
今回、本研究チームの観測により超新星「PS1-10afx」と地球との間にある銀河を初めて発見し、この銀河の重力によって虫めがねのように超新星の光を集める「重力レンズ現象」のために、超新星「PS1-10afx」が通常よりも明るく輝いて見えていたことが分かりました。超新星「PS1-10afx」は、明るさが一定で、宇宙の距離測定にも用いられるIa型(いちえいがた)超新星でした。2010年に発見された当初から、その飛び抜けた明るさのために、新種の超高輝度超新星なのか、通常のIa型超新星が重力レンズで明るく見えたのか、論争がありましたが、今回の発見は本研究チームが昨年発表した(米国The Astrophysical Journal Letters誌2013年5月1日号)、後者の説を裏付けるものです。
今回の発見はまた、強い重力レンズ効果を受けたIa型超新星の初めての発見です。研究チームは、将来の観測を工夫することで同様のIa型超新星の重力レンズ現象がこれまで予測されていたよりはるかに多く発見される見通しを示しました。このような観測が実現すれば、宇宙の加速膨張を直接測定できるようになると期待され、今後、宇宙膨張の研究において超新星の観測がさらに重要になります。
今回発見した銀河による増光のメカニズムの模式図
超新星と地球との間にある銀河による重力が、巨大なガラスレンズの様に光を集めたと考えられる。(クレジット:Kavli IPMU)
詳しい研究内容について
明るすぎる超新星、手前に虫めがねがあった! -重力レンズを生み出す銀河をついに発見-
書誌情報
[DOI] http://dx.doi.org/10.1126/science.1250903
[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/186162
Robert M. Quimby, Masamune Oguri, Anupreeta More, Surhud More, Takashi J. Moriya, Marcus C. Werner, Masayuki Tanaka, Gaston Folatelli, Melina C. Bersten, Keiichi Maeda, Ken'ichi Nomoto
"Detection of the Gravitational Lens Magnifying a Type Ia Supernova"
Science Vol. 344 no. 6182 pp. 396-399, 25 April 2014
掲載情報
- 日本経済新聞(4月29日 15面)および読売新聞(4月28日夕刊 10面)に掲載されました。