本学主催の高校生によるポスター発表「京都大学ポスターセッション2023」を、2024年3月16日に百周年時計台記念館国際交流ホールにて実施しました。本企画は、ポスター発表を通じて高校生が日頃の課題探究活動の成果を披露するもので、2017(平成29)年度から開始し今回で7回目の開催となりました。
今年は、全国の国公私立高校31校から128名が参集し、文系理系あわせて31テーマのポスターが出展されました。緊張した面持ちの中、他校の生徒の前で研究成果をプレゼンテーションしている姿はいつも以上に生き生きしているようにも見え、質疑応答でも各々の意見を述べあう場面もありました。
プレゼンテーション終了後、参加者全員による投票や複数の高校教員からの審査意見も踏まえ、下記3校を優秀ポスター賞に決定し、賞状と記念のトロフィーを贈呈しました。村上章 高大接続・入試センター長は、「ほとんど点差のない立派な研究発表ばかりでした。これからは探究活動だけでなく、もっと幅広い視野で様々な体験を積んでいって欲しい。」と語り、参加生徒のさらなる活躍を願うとともに、的確な指導を続けている高校関係者にも、労いの言葉と賛辞を送りました。
優秀ポスター賞 受賞校
兵庫県立姫路東高等学校
研究テーマ
「山陽帯花崗岩類の角閃石から発見した波状累帯構造からマグマ分化末期の熱水残液の循環を推定する」
講評
まず、自分たちでマップを制作していることの驚きとともに本研究の凄みを感じました。地質学の先行研究に基づいてデータも蓄積しており、新しいことへの挑戦と完成度も評価できます。また、生徒の皆さんの発表姿勢も大いに評価できるものです。
受賞校からのコメント
これまで岩石や地層というと「暗い」と敬遠されてきました。地学の授業が開講されている学校が少なく、教科書の内容でさえ「難しい」と言われ続けてきました。ですから今回優秀賞に選ばれたことは驚きで、ようやく陽の目を見た気分です。今回の研究は、「地質調査(山歩き)、続いて岩石試料の採取と偏光顕微鏡での観察、最後に高大連携を活用したEPMA分析」というもので、高度な化学の内容が必要で苦労しましたが、分かったと言ってもらえてうれしかったです。
お茶の水女子大学附属高等学校
研究テーマ
「モデル実験による床上浸水時の避難の妨げにならない家具配置の検討」
講評
実験モデルの提案であり、研究成果として将来的に結実する可能性が高いものと思われます。扱いづらい内容も工夫次第でこのような意味のある研究となる、まさにお手本のような発表でした。今後の条件設定次第では、重要なデータの発見や研究に対する視座が高まっていく可能性も秘めています。
受賞校からのコメント
発表を通じていただいた助言や質問により、研究に対する理解を一層深められたように感じます。受賞とともにこのような貴重な経験をさせていただいたことを大変嬉しく思います。モデル実験に際しては考慮した要素とそうでない要素の区別を明確にする必要があると痛感しました。実用化に向けた可能性を評価していただいたため、今後も要素の区別に留意しつつ実用的な知見につなげたいと考えております。最後に、お世話になった先生方に感謝申し上げます。ありがとうございました。
東京都立戸山高等学校
研究テーマ
「星の瞬きと高層気象〜星と気象を結びつける〜」
講評
多くのアプローチ分析を行っており、自分たちの考えも予め練られています。その一方で、現状のやや過密すぎるデータをコンパクトにまとめていくことによって、より核心に近づいていくことが期待され、そのことによって研究評価がさらに高まっていくようにも思われます。
受賞校からのコメント
このたびは、本研究に講評・評価をいただき感謝しています。本研究は、星の瞬きがなぜ生じるのかという疑問から出発し、それをどのように数量化することから研究が始まり、高層気象との関係にまで発展しました。地道な観測による研究が評価されたことをうれしく感じています。また、研究に当たって指導助言を頂いた、防災科学技術研究所の鈴木真一先生(前職)、出世ゆかり先生に感謝いたします。