宇南山卓 経済研究所教授が、「第66回日経・経済図書文化賞」および「第45回(2023年度)サントリー学芸賞[政治・経済部門]」を受賞しました。受賞作は「現代日本の消費分析―ライフサイクル理論の現在地」(慶應義塾大学出版会)です。
日経・経済図書文化賞は、経済および経営・会計分野の学問、知識の向上に貢献するとともに、その一般普及・応用に寄与することを目的として、昭和33年に設立されました。本賞は、過去1年間に刊行された経済・経営に関する図書の中から優れた作品を表彰するものです。なお、受賞式は、2023年11月10日に東京にて開催されました。
サントリー学芸賞は、広く社会と文化を考える独創的で優れた研究・評論活動を、著作を通じて行った個人を顕彰する賞で、1979年の創設以来、受賞者の業績は、主題への斬新なアプローチ、従来の学問の境界領域での研究、フロンティアの開拓などの点で高く評価されています。既存の枠組にとらわれない自由な評論・研究活動に光を当てることは、本賞の重要な役割となっています。なお、受賞式は、2023年12月11日に東京にて開催される予定です。
本書は、消費税率引上げ、特別定額給付金の消費刺激効果、児童手当給付問題、老後の生活資金の不足問題など、わが国の消費にまつわる現象を「ライフサイクル理論」を用いて分析したものです。経済環境の変化に対し、家計がどのように行動を変えるのか、その根底にあるメカニズムの解明を試みたものです。ライフサイクル理論は、70年の歴史を持つ現代経済学の根幹となる理論であり、これまでに多くの修正、拡張がされてきました。そのライフサイクル理論の発展を概観することで、現在の経済学において消費の決定構造がどのように理解されているかを示しています。また、ミクロデータを用いたさまざまな実証を通じて、日本の家計の消費行動の特徴を浮き彫りにしています。さらに、理論的に一貫した視点からの分析に基づき、消費に対する政策的介入の効果についても評価し、適切な政策のあり方を論じています。