本学理学部において理論物理学を講じた玉城嘉十郎の没後、ご遺族からの寄附により創設された「玉城記念講演会」が、2019年(令和元年)に50周年を迎えたことを機に、書籍「京大理学部 知の真髄―玉城嘉十郎の2つの遺産」を2022年12月30日に出版しました。
2つの遺産とは、湯川秀樹、朝永振一郎をはじめ、玉城研究室から紡ぎ出されたノーベル賞受賞者の系譜と、偉大な教育者であった玉城嘉十郎を記念して、すぐには実らなくても測ることが出来ない成果を期待して広く基礎科学の話を聞こうと始めた講演会のことです。この2つの遺産に焦点を当てつつ、新しい科学の世界を切り拓いてきた本学理学部の知とは何かについて考えます。
もっとも、常識にとらわれず、何かおもろいことをやろう、という京都大学の風潮、そこで躍動する研究者の姿を「変人」あるいは「アホ」として表現することは人口に膾炙しています。しかし、「変人」や「アホ」は一表現形に過ぎません。京都大学の知を語る根源的な言葉を探したい、それが本書が目指すものです。
科学は人と人が出会い、影響を与え影響を受けて紡がれていくものです。本書では、新たな学問分野の開拓のもとにある人間ドラマや、日々の研究室風景の中から京大理学部らしさとは何かを考え、本学理学部の知の真髄に迫ろうとしました。
なお、本書は玉城記念講演会事業の一環として、公益財団法人湯川記念財団の助成を得て出版されました。