京都大学とゼンショーホールディングスが、共同研究講座「食と健康科学研究講座」を開設しました

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 京都大学と株式会社ゼンショーホールディングス(以下 ゼンショー)は、医学研究科に共同研究講座「食と健康科学研究講座」を2022年10 月1日に新たに開設し、研究を開始しました。

 本共同研究講座では、医学研究科のAI(人工知能)解析技術や最新の機器分析学と、ゼンショーグループが持つ食資源・サプライチェーンを活用し、これまでの機能性食品素材の探索とは全く異なるアプローチで、あらゆる食材における機能性の網羅的探索に取り組みます。外食企業において、このような食材に関する研究講座を開設するのは初の試みです。

 日本人の食生活は、第二次世界大戦以降、動物性たんぱく質や脂質の摂取量の増加等の変化を遂げたことで、がん、脳卒中、糖尿病等の生活習慣病の増加が深刻な問題となってきています。特に糖尿病をはじめとする生活習慣病の前段階の状態であるメタボリックシンドロームが問題視されています。糖分は私たちが生きていくためのエネルギーとして大切な食品成分ですが、その摂取量が多すぎると血管が傷つきやすくなり、様々な病気を引き起こすことにつながります。したがって、血糖値の上昇を抑えるには、糖質の摂取量を減らすことが有効であると考えられますが、極端な糖質制限は体への負担がかかる場合もあり、何よりも「食べる楽しみ」が損なわれます。このジレンマを解決するために、おいしく楽しく満足感のある日常の食事を通じて、無理なく健康機能を維持できるよう食品をデザインする技術の確立が課題といえます。

 そこで本講座では、これまでの機能性食品素材の探索とは全く異なるアプローチとして、AIを用いた計算科学による食品素材探索を行います。この方法は、創薬科学で近年用いられるようになった方法で、ターゲットとなる化合物や、その作動メカニズムが解明されている場合には非常に有効とされています。AI解析技術を中心に、(1)味覚などの感覚受容体における解析技術、(2)腸管での栄養吸収解析技術、(3)高度な機器分析による化学構造解析、(4)ゲノムから代謝産物におけるオミクス解析の4つの技術を活用して、食事に対する満足感が得られ、しかも健康機能を維持できるような食品素材探索を開始します。また得られた知見から、食材の組み合わせや摂取の仕方を工夫することにより、無理なく健康機能を維持できる食環境の提供を目指します。

共同研究「食と健康科学研究講座」の概要

  1. 講座名: 食と健康科学研究講座
  2. 設置場所: 京都大学 医学研究科
  3. 設置期間: 2022年10月1日~2026年3月31日

研究者のコメント

奥野 恭史 医学研究科 人間健康科学系専攻 教授

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人の健康維持に食事は欠かせないものです。それだけではなく、おいしい食事は我々に幸福感をもたらします。一方、肥満、糖尿病などの飽食が一因とされる病気の対策には、食事制限やダイエット食などがなされ、おいしいという幸福感を犠牲にしがちであることは否めません。本来、健康は幸福を手にするための必要条件であって、健康を手にするためにおいしい食事を楽しむ幸福感を犠牲にすることは矛盾しているのです。

医学研究科ビッグデータ医科学では、これまで医療、創薬を高度化するAI、シミュレーション技術の開発を行ってきました。「食と健康科学研究講座」では、これまで我々が医療、創薬分野で培ってきた最先端技術を食に応用することで、おいしさと健康を両立する新たな食の科学の開拓を目指します。

永井元 株式会社ゼンショーホールディングス ゼンショー中央技術研究所長

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ゼンショーホールディングスでは、世界中の食のインフラを整備・確立するために現在、外食・小売を10,000店舗以上展開しています。そこで提供される食事は、お客様の健康な食生活を保証するものでなければなりません。食と健康の課題につきましては、生活習慣病を未然に防ぐという観点から栄養の過剰摂取が問題視されています。しかしながら今ある健康栄養施策は、おいしく・楽しく食事をすることとの両立を困難にさせています。「食と健康科学研究講座」では、この難問を解決するために食材が持っている新しい機能性探索を開始します。得られた研究成果が、お客様の健康と豊かな食生活をリードできる技術として確立されることを願っております。