アフリカ地域研究資料センターは、上智大学、東京大学、東京外国語大学との共催で、シンポジウム「日本のアフリカ研究を総覧する」を開催しました。本シンポジウムは、今年8月に開かれる「第7回アフリカ会議(TICAD7)」のパートナー事業として開催されたもので、 上智大学にて行われました 。
本学からは山極壽一 総長が基調講演を行い、高橋基樹 アフリカ地域研究資料センター 教授、太田至 名誉教授も登壇しました。
山極総長は、「ゴリラから見た日本のアフリカ研究」と題し、アフリカで30年以上継続してきたゴリラの研究を振り返りながら講演しました。長年のフィールドワークから、ゴリラの個性や歴史だけでなく、その自然環境や地域住民との関係について学び、ガボンでは野生動物の保護と地域産業の持続を目指したエコツーリズムのプロジェクトを開始しました。その経験から、アフリカで基礎研究を行いながら、現地の研究者の人材育成や現地住民と協働することの重要性について語りました。
その後、13の大学・研究機関がそれぞれのアフリカ研究について紹介する場が設けられ、本学からは高橋教授が発表を行いました。本学のアフリカ研究は、その歴史の長さや分野の幅の広さからも唯一無二であるとともに、基礎研究だけでなく、異分野を融合した課題解決型の研究が多い点も特徴であると述べました。
シンポジウムの後半では、外務省、JICA、NGOでアフリカに関わる実務家とともに、日本のアフリカ研究の特長や課題、今後の方向性について協議するパネルディスカッションが行われました。日本アフリカ学会の会長でもある太田名誉教授は、同会の研究者がアフリカを理解するための研究やアフリカから学ぶことに問題意識を持ってきた半面、実務者との協働が十分でなかった点を指摘しました。
本シンポジウムを通じ、日本の大学が行ってきたアフリカ研究の裾野の広さや、その意義を再確認できただけでなく、SDGsに代表される今日的課題に対応するには、分野を超えた協働が必要である点についても認識を強めました。また、日本のアフリカ研究者が構築してきたネットワークを、政策担当者や民間部門などの実務者との間にも拡大させる重要性も共有されました。