本学と人間文化研究機構は、インドネシア共和国泥炭復興庁とともに、泥炭火災によってもたらされる煙害や二酸化炭素の大量排出を防ぐべく、さらに荒廃泥炭地の復興と地域住民生活の再生に向けて、今後協力して研究していくとする共同声明を発表しました。
2015年7~11月のインドネシア泥炭火災由来の温室効果ガス排出は、2013年の日本の年間CO 2 排出量を超えると推定されています。煙害による健康被害はインドネシアだけでも約4300万人にのぼり、50万人以上が上気道感染症などにかかっているといわれています。越境汚染も深刻で、近隣諸国との国際問題となっています。
インドネシア政府は、この状況をきわめて重く受け止め、一時的な経済的利益よりも、環境に配慮した長期にわたる泥炭地の活用を図るように大きく政策を転換しました。そして、2016年1月には泥炭復興庁を創設し、国家をあげて、荒廃した泥炭地を修復する事業を行うことにしました。今後、2020年までの5年間に、200万ヘクタールの乾燥し劣化した泥炭地の再湿地化と、そこにおけるアグロフォレストリーや漁業による持続的な「パルディカルチュア」の展開を目指しています。
一方、本学は、1970年代より東南アジア泥炭地研究を進めており、近年は現地の大学と協力した文理融合および実践研究によって多大な実績をあげています。またこれら研究成果の蓄積は、同じく京都に所在する総合地球環境学研究所(人間文化研究機構)のプロジェクト「熱帯泥炭地域社会再生に向けた国際的研究ハブの構築と未来可能性への地域将来像の提案」の基盤となっています。本学と人間文化研究機構は、自然科学的研究だけでなく、土地権をめぐる紛争など社会経済面の研究も含めた、文理融合による実践研究をさらに強力に推し進めるべく、インドネシア泥炭復興庁とともに、今回の声明を発表しました。
左から、立本成文 人間文化研究機構長、山極壽一 総長、 Nazir Foead インドネシア共和国泥炭復興庁長官