新しい人工ヌクレアーゼPlatinum TALENを用いたゲノム編集によって高効率にカエルやラットの遺伝子改変が可能に!

新しい人工ヌクレアーゼPlatinum TALENを用いたゲノム編集によって高効率にカエルやラットの遺伝子改変が可能に!

2013年11月29日

 真下知士 医学研究科特定准教授、金子武人 同特定講師は、山本卓 広島大学理学研究科教授のグループと松浦伸也 同原爆放射線医科学研究所教授のグループとの共同研究により、新しい人工ヌクレアーゼPlatinum TALENの開発と、これを用いたカエルやラットでの高効率の遺伝子改変(ゲノム編集)に成功しました。Platinum TALENを用いたゲノム編集は、iPS細胞などの培養細胞や畜産動物においても効率的に改変可能であることが分かっており、今後、医歯薬学、生物育種等の広範囲の応用研究に利用できると期待されます。

 本研究成果は、2013年11月29日に英国Nature Publishing Groupの科学雑誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。

ポイント

  • DNA結合モジュールのアミノ酸改変によって、高活性型のTALEN(Platinum TALEN)の開発とその作製システム(Platinum Gate system)の開発に成功
  • Platinum TALENを使うことによって、これまで変異導入効率が低かった哺乳類において高効率に変異導入が可能(効率がよい場合は100%の変異導入効率)
  • Platinum TALENは、iPS細胞での遺伝子改変にも利用可能で、医科学・再生医療の進展に大きく貢献

背景

 近年、さまざまな生物(微生物や植物、動物)で利用できる遺伝子改変技術として、人工の制限酵素(人工ヌクレアーゼ)を用いたゲノム編集(Genome editing)が注目されています。ゲノム編集を用いることによって、細胞内の目的の遺伝子のみに欠失や挿入などの変異を導入し、遺伝子を破壊(ノックアウト)することできます。また、目的の遺伝子の中に外来の遺伝子を挿入(ノックイン)することも可能になります。これまで、人工ヌクレアーゼのZFNやTALENを用いたゲノム編集によって、さまざまな生物での遺伝子改変が行われてきましたが、これらの作製は煩雑であることに加え、哺乳動物では遺伝子改変効率が低いという問題がありました。

研究結果

 本研究グループは、これまで使われていた人工ヌクレアーゼのTALENのDNA結合モジュールのアミノ酸配列を改変し、培養細胞における活性評価を行うことで、高い活性をもったTALEN(Platinum TALEN)の開発に成功しました。また、Platinum TALENを効率的に作製するシステム(Platinum Gate system)を独自に確立しました(図1)。

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図1:使用したiPS細胞の由来と樹立方法

 

 さらに、Platinum TALENを用いて、カエルとラットにおいて50%以上の高い変異導入効率で遺伝子を改変することに成功しました(図2、3)。

 

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図2:アフリカツメガエルの色素合成に関与する遺伝子をPlatinum TALENによって破壊した例

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図3:(上図)ラットでのPlatinum TALENによる遺伝子破壊のイメージ図、(下図)導入された変異

波及効果

  これまで使われていたTALENは、活性にばらつきがあり、全ての生物で高効率遺伝子改変を実現する人工ヌクレアーゼの開発が必要とされていました。特に、マウスなどの哺乳類での人工ヌクレアーゼでの遺伝子改変効率が低いという問題がありました。今回開発したPlatinum TALENは高効率で遺伝子を改変することが可能であり、これまでの問題を解決し、基礎研究および応用研究に必要な遺伝子改変生物作製に大きく役立つと期待されます。

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1038/srep03379

[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/179554

Tetsushi Sakuma, Hiroshi Ochiai, Takehito Kaneko, Tomoji Mashimo, Daisuke Tokumasu, Yuto Sakane, Ken-ichi Suzuki, Tatsuo Miyamoto, Naoaki Sakamoto, Shinya Matsuura & Takashi Yamamoto
"Repeating pattern of non-RVD variations in DNA-binding modules enhances TALEN activity"
Scientific Reports 3,Article number: 3379
Published 29 November 2013

 

  • 日刊工業新聞(12月11日 20面)に掲載されました。