みなさんは、大学にも農場があることをご存知でしょうか?
農作物を育てるだけでなく、農学・農業に関わる教育や研究の場として、重要な拠点機能を果たしています。
以前、 「実は」!Vol.12 でご紹介した京大の附属農場が、移転してリニューアルしたとの情報を聞きつけた広報H。しかもとっても環境にやさしい農場なのだとか・・・。これはぜひ確かめに行かねばなりません!
一体どんなふうに新しくなったんでしょうか?今回は、最新設備を導入しグレードアップした京大農場の秘密に迫ります!
京大農場についておさらい!
農学研究科附属農場(以下、京大農場)は、農学部設置とともに吉田キャンパス北部構内に開設されました。その後、高槻農場(大阪府高槻市)を本場として長らく教育・研究の場として機能してきましたが、地下に弥生時代の遺跡があることが判明!このままだと、施設改修などができない・・・ということで、遺跡保護の観点から、今後、農学の教育研究に求められる機能向上に対応していくためにも、移転を決定。2016年4月に、木津農場(京都府木津川市)として新しくオープンしました。
★どんなことをしているの?
- 【教育】 学生に農学の基礎を学んでもらうため、栽培技術に関する講義や実習を実施しています。
- 【研究】 食・環境・エネルギー問題を解決しつつ、高収量・高品質生産を可能にする新技術や新規植物の開発を目指しています。
- 【支援】 技術職員が、農作物の栽培管理や遺伝資源の保存、農業機械・施設の維持整備などを行い、農場における教育研究を支援しています。
- 【地域連携】 公開講座やオープンファーム、地域・企業との連携も積極的に行っています。
新・京大農場へ行ってきました!
京大農場の最寄駅はJR木津駅。そこからバスが出ていますが、お天気が良かったので徒歩で向かうことに。爽やかなウォーキングを楽しみました!
案内していただくのは・・・北島宣 農学研究科教授!
真新しい建物に入るのを躊躇してウロウロしていた広報H、ニコニコ素敵な笑顔の男性に出会いました。この方は何を隠そう、移転前から京大農場に携わり愛を注いできた、農場マスターの北島先生!京大農場についてアレコレ聞いちゃいました。
北島先生 :「農作物だけでなく、エネルギーの生産も目指す 「グリーンエネルギーファーム」 モデルを構築したこと!環境に優しい農業生産を目指し、太陽光発電や、都市ガスを使った 「トリジェネレーションシステム」 (後で詳しくご紹介)など、再生可能エネルギーを 地産地消 する工夫をしています。」
北島先生 :「さらにグレードアップしましたよ!例えば、水田の 地下水位制御システム の導入。稲作時は水をため、畑作時は水を抜いて最適な水位に調整します!また、収穫した農作物については、これまでは人間の目で傷がないか確認したり、重さを量ったりして選別していました。それが 光センサー選果機 の導入により、糖度などの測定ができるようになったので、高精度な品質保証が可能に!」
北島先生 :「実は、移転がちょっぴり残念だったりして・・・」
広報H :「えっ、そうなんですか!?」
北島先生 :「前の高槻農場で発見された遺跡は、弥生時代前期、ちょうど稲作が始まった頃のものだったんですよね。氾濫した水田を心配して見に来た人の足跡なんかも残っていました。そんな米作りの地に、また私たちが米を作って、約2500年続いてきた稲作の歴史が終わってしまった・・・。これはちょっと残念ですね(笑)」
ちなみに、北島先生はこんなことを研究しています!
- 無核(種なし)性カンキツの育成技術の開発
- カンキツ果実の離脱現象の解明
- カンキツの起源と種分化に関する研究
- 果樹類の染色体に関する研究 etc...
先生の最新の研究成果はコチラ!
→ ミカンの親はどの品種? -遺伝解析により60種以上のカンキツ類の親子関係が明らかに-
クオリティ高い農作物・・・その秘密は、 自然エネルギー !
本館の周りには、温室がズラリと並んでいます。ここでたくさんの農作物が大事に大事に育てられ、京大の名を背負って旅立って行きます。
高品質の農作物を育成するために、数々の工夫がなされている温室を、実際に見せてもらいました!
施設園芸には、どうしてもコストがかかるもの。これまでは、いかにエネルギーを節約するかが大きな問題となっていました。
それがトリジェネレーションシステムの導入により、 エネルギーを自ら作り出し、積極的に使えるように! 今後は学内のさまざまな部署や民間企業と協力しながら、より効率良くエネルギーを配分できる、エネルギーマネジメントシステムの構築も目指していきます。
京大生まれの農作物たち。気になるお味は・・・?
こんなに手間暇かけて育てられた農作物は一体どんなお味なのでしょうか!?持ち帰り、広報課特命調査隊で検証しました!(ええ、ただの試食隊です)
次世代の農と食とエネルギーを創るグリーンエネルギーファーム。しかしこの中心には、次世代を担う「人」がいます。育てているのは農作物だけじゃありません!人材育成にも努めている、京大農場の新しい教育プログラムをご紹介します!
京大農場で学ぼう!
京大農場は、2016年に文部科学省教育関係共同利用拠点に認定されました。京大生、農学を専門とする学生に限らず、全国のあらゆる学部の学生が京大農場で学べるように!
農・食・エネルギーは、私たちの生活を支え、誰の身にも関わってくる大切な問題です。これらの問題を解決する人材を育てるため、2017年度より、新しい科目「グリーンエネルギーファーム論と実習」が開講します!
「グリーンエネルギーファーム論と実習」(学生対象)
夏休みに行われる、4泊5日の短期集中型実習。主に午前中に栽培実習、午後に講義とグループワークを行います。農業生産を支える基本の栽培技術と、グリーンエネルギーファームについて学びます。 グループワークでは関連したテーマについて、さまざまな大学、専門分野、学年の学生がファシリテーションによりアイデアを集約。創造力が大いに刺激されます!
また、実習中の食事は参加学生が自ら調理!農作物がどのように生育し、最終的に食卓に並ぶのか、栽培→収穫→調理という一連の流れを通して実際に知ることができます。
「農」や「食」に対する理解を深め、それぞれの分野の立場から食料、環境、エネルギー問題について考える視点を養うことを目的とした、今注目のプログラムです!
(この科目は農学部資源生物科学科で開講しており、京大生は誰でも受講申請できます。)
シラバスや応募方法など、詳しくはコチラ!
→ http://www.farm.kais.kyoto-u.ac.jp/share02
「学生だけしか参加できないのか、残念・・・。」と思っている方に朗報!このたび、初めて社会人向けプログラムも開講しました。 (2017年度履修分の出願受付は2月22日まででしたが、希望される場合はtominaga*kais.kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)へお問い合わせください。)
「農業と農学の最前線 -次世代農業マイスター育成プログラム-」(社会人対象)
2017年度より新たに開講した社会人対象プログラム。原則隔週土曜日開講(全15回)。「世界の作物生産」「作物の品種改良の原理」などの講義と、田植え、タマネギ収穫、バラ栽培などの実習を行います。
詳しくはコチラ!
→ http://www.farm.kais.kyoto-u.ac.jp/shakajin-rishu
さらに、一般の方でも気軽に農場を見学できる大チャンスがあります!
「京大農場オープンファーム」(どなたでも参加可能!)
京大農場は毎年11月3日(祝)に一般公開行事としてオープンファームを開催しており、農場ツアー、農業体験実習、公開ラボ、パネル展示、農産物即売などのイベントや公開講座を行っています。(参考: 「実は!」Vol.12 )
新しくなった京大農場は、広報Hの予想以上に時代の先を行く大幅なリニューアルを遂げていました。
最近では、商業施設「ラクエ四条烏丸」の地下1階にあるスイーツ店「アローツリーカラスマ」と農産物の活用に関する提携を結びました。これにより、京大農場産のイチゴやトマトをより多くの方に楽しんでもらえるように!もしかしたら新しいスイーツが誕生するかも・・・?
今後、京大農場を拠点にエネルギーの地産地消が幅広く浸透し、新たな問題解決につながっていけば・・・と思います。
取材にご協力いただいた北島先生、技術職員の方々、ありがとうございました!
次回の「実は!」もお楽しみに!
京大農場について、もっと知りたい方はこちら!
- 京都大学大学院農学研究科附属農場
http://www.farm.kais.kyoto-u.ac.jp/
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