京大はたくさんの学生が学ぶ、多様性溢れるキャンパスです。
その中には障害のある学生もいて、さまざまなサポートを受けながら学生生活を送っています。
京大で学ぶ障害学生の数は年々増えていますが、大学全体のバリアフリー化には、物理面でも意識面でもまだまだ課題が残っているところ。
京都大学の障害学生支援とは?今、大学にできることは?
誰もがともに学べる環境づくりを目指し、新しいチャレンジを続ける京大の障害学生支援ルームを取材しました。
障害学生支援ルームって、どんなところ?
障害学生支援ルームとは、学生が充実した学生生活を送ることができるよう設立された「学生総合支援センター」にあるルームの一つで、障害のある学生に対する修学支援の専門窓口です。
個別対応だけでなく、センター内のカウンセリングルーム、キャリアサポートルームとも連携し情報共有しながら、さまざまな角度から一人一人に合わせた支援を行っています。
★主な役割は・・・
- 障害のある学生の授業保障や学生生活を送る上での支援・相談
- 障害のある学生をサポートする支援学生の養成・派遣
- 支援に関連する部局や教職員との連携
- 支援ノウハウ、情報の蓄積
- 支援に関する各種講座などの開講 etc・・・
障害学生支援ルームを訪問してみました!
一体どんな設備、サポートがあるのでしょうか?広報Hが実際に同ルームに行って見てきました!
例えば「テーブルといすはセット」という、多くの人が持っている認識を一度見直し、「車いすの人からすると、使いにくいんじゃないかな?」という目線を持つこと、持ってもらうこと。
障害学生支援は、まずこういったことから始まるのかもしれません。
多くの人が当たり前に感じているようなことを、違う目線で見てもらう・・・。
障害学生支援ルームは、そのキッカケづくりにも積極的に取り組んでいます!
障害学生支援ルームのココがすごい!アイデア満載の刊行物
同ルームでは、障害に対する理解を促進するため、パンフレットやポスターなどの刊行物を作成しています。
障害について深く理解してもらうことはもちろん大切ですが、たくさんの人に、少しだけでも良いから「こんな障害がある」「こんな問題がある」と知ってもらうことも大切。
そのための工夫がたくさん詰まった刊行物をご紹介します!
これらの刊行物だけを見ても、かなりの充実ぶり!
ただストレートに訴えるのではなく、 京大のオリジナリティ を盛り込んでどこかにインパクトを与えることで、少しずつ意識を浸透させていく。
情報を発信している立場として、広報Hも見習うべき点がたくさんありました。
では、実際に障害学生支援ルームを利用してみた感想は?日頃同ルームを利用している学生さんにインタビューしてみました!
利用者の声を聞いてみました! 教育学部1回生 油田優衣さん
以前、 「実は!」Vol.42 にもご登場いただいた油田優衣さん。
「脊髄性筋萎縮症」という難病を抱えながらも、困難を乗り越えてきた経験を活かし、2016年に特色入試に合格!
「好きなこと、関心のあることを追究できるのが楽しい」と、障害学生支援ルームを活用しながら充実した大学生活を送っています。
Q.障害学生支援ルームのことを知ったのはいつですか?
「いろいろな大学の障害学生支援施設を調べていて知りました。オープンキャンパスでも見学はできたのですが、個別にじっくりと見学したいと思い、高2の11月に京大のルームを訪問。当時6~7校くらいの施設を実際に訪問してみたのですが、京大の雰囲気がダントツ良かったんです!」
Q.同ルームを利用してみて、良かったと思う点は?
「初めて訪問したときから感じていたことですが、何といってもスタッフさんの頼れる雰囲気!人によって障害はバラバラですし、できる支援とできない支援があります。どこまでの支援ができるか分からないけれども、 一緒に問題を考え、解決してくれようとする姿勢がとても協力的で心強く、安心感を覚えました。 」
また、支援者の確保は障害のある学生にとって大きな問題ですが、そこをサポートしてくれるところがとてもありがたいです。支援が義務化されていない高校では、先生に自ら交渉しなければいけませんでした。交渉のために時間を費やし、勉強する気力が残っていない、なんてことも・・・。けれども今は、困ったら相談できる環境があり、移動介助をしてくれる学生サポーターさんもいます。 周りと同じスタートラインに立ち、好きなことに思いっきり打ち込めることが今はただ嬉しいです。 」
Q.今後、期待することはありますか?
「 大学内での食事やトイレ介助が可能になればと思っています。 実は、今の法律ではそこまでカバーされていなくて、教育機関の中で受けられる福祉のサポートには限界があります。日常的な当たり前のことを、みんなと同じようにできるようになれば、障害を理由に大学を諦める学生もきっと少なくなると思います。時間がかかる難しい問題ですが、少しずつ解決されていくことを願っています。」
うーん、まだまだ大学には課題が山積みですね。障害学生一人一人に十分なサポートができる体制になるまでには、行政との連携や法改正などが必要になってくるかもしれません。
今、大学にできることは何でしょうか?大学全体のバリアフリー化を目指して活躍するルームのスタッフにも、話を聞いてみました!
スタッフに聞いてみました!村田淳 障害学生支援ルーム助教(チーフコーディネーター)
村田先生は、チーフコーディネーターとして日々たくさんの学生の相談に乗り、文部科学省「障害のある学生の修学支援に関する検討会」の委員を務めるなど、学内外の障害学生支援を推進しています!
Q.同ルームの利用状況について教えてください。
「 合理的配慮 (授業や試験での特別措置)を必要とし、正式に登録している学生は40名弱ですが、個別相談などでルームを利用する学生は、その倍以上にのぼります。どうすれば彼らの能力を伸ばせるか考えながら、個人に合わせたサポートを心がけています。」
Q.学生サポーターは、どんなことをしているんでしょうか?
「現在70~80人の学生サポーターがいて、移動介助や授業中のノートテイク、視覚教材への字幕付与などサポート内容は多岐にわたります。フリーアクセスマップ更新のための調査も、学生サポーターに協力してもらっています!」
Q.現状の課題を教えてください。
「例えば、バリアフリー化が大切だということはみんな分かっていますが、授業で学生に「さっき自転車を駐めたところは、視覚障害の方の妨げになっていませんでしたか?」と聞くと、自信を持って大丈夫だと言える人はなかなかいません。 当たり前で意識されないことを、ユーモアを使って浸透させ、共生できるキャンパス環境をみんなで作っていきたいですね。 」
Q.最後に・・・ 障害学生支援において大切なこと って、何ですか?
「学生さんに相談に来てもらっても、私たちスタッフが直接支援できるわけではありません。学生生活を過ごすキャンパスでは、 大学を構成する学生・教職員一人一人の意識が大きなサポートになります。 社会に出る前に、周りの学生と同じように過ごし、成長していってほしい。そんな願いを込めて、 これからも学生さんと一緒に困って、一緒に困らない方法を見つけていきます。 」
障害学生支援ルームの「実は!」、いかがでしたか?
相談に乗りサポートを行うだけではなく、環境づくり、意識醸成を目指した積極的な活動を行っていることが分かりました。
大学全体のバリアフリー化に向けて、キャンパスを構成する一員として、小さなことから意識してみようと決心した広報Hでした。
取材にご協力いただいた油田さん、村田先生、ありがとうございました!
次回の「実は!」もお楽しみに!
障害学生支援について、もっと知りたい方はこちら!
- 京都大学学生総合支援センター 障害学生支援ルーム
https://www.gssc.kyoto-u.ac.jp/support/ - 公益財団法人大学コンソーシアム京都 障害学生支援
http://www.consortium.or.jp/project/dss
→他大学の取り組みについて知ることができます!
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