引原 隆士(ひきはら たかし)
情報基盤、図書館担当
副学長
メッセージ
2022年10月1日より、情報基盤、図書館担当の理事・副学長を拝命しました。これまで、工学研究科の教員・研究者を続ける傍ら、2012年10月より図書館機構長(附属図書館長)を、また2021年4月より、情報環境機構長として全学の情報環境の維持・管理に努めて参りました。この間、学内外から賜りましたご指導、ご支援に改めて御礼申し上げます。これまでの任は、それぞれの全学機構における組織・機能の最適化でしたが、今後は大学全体、あるいは我が国、世界の学術情報流通全体における本学の立ち位置を明確にし、学術基盤のあり方を方向づけていくことにあると認識しています。これまでの経験を生かして、微力ながら進めて参ります。
コロナ禍にあって、早や3年近く教育・研究の推進が停滞したことは言うまでもありません。教育に関しては、教育を受ける側の継続性を重視し、遠隔による講義の実施ができるようネットワークとその基盤の維持やシステムの増強などを行ってきたところです。その実現にあたっては、関係の皆様のご配慮だけでなく、学生、研究者の皆様の忍耐と熱意によるところが大きいと感じています。今後は、どのような時間、場所にあっても等しく教育の機会が得られ、どんな時間、場所でも研究のための資源を手に取ることができるようICT基盤をさらに整えていくことが求められています。現状は過渡的なもので、教育の現場を支えるあり方としても、可能性を広げる方向ですすめる必要があります。教育・研究の基盤を所掌ごとに従来の方法に戻すのではなく、利用者、受益者への対応の意味を改めて見直し、ICT基盤の改善に努めて参ります。
また、コロナ禍も加速要因となり、世界における研究推進のあり方も、各分野で激変してきています。研究において、各研究者は成果だけでなく、研究の一次データ、二次データを管理し、それらを新たな研究資源として運用するためのプラットフォームの構築、さらには論文のオープン化の要求など、その透明性を求める動きが加速しています。加えて、学内の研究者からは、昨今のAIと称される学習アルゴリズムにより、これまで蓄積されてきた研究データを学内で運用できる体制を整えることを強く求める声も聞かれます。従来のように、研究者個人の努力に委ねるだけではなく、大学がその運用基盤を整え、学内で生産される研究データと学外のデータの連携を可能にし、適切な管理体制の下でエッジ処理ができる環境を整えることが、「京都大学ICT基本戦略2022」(令和4年3月)としてまとめられました。この戦略を実現すべく、運営に努力していきたいと考えております。
京都大学は,2022年に創立125周年を迎え、我が国有数の総合大学として、多様なミッションを推進しています。それ故に、そのスペクトルの広さを強みとする基盤構築が、次期への投資にならなければなりません。このことを念頭に、現在の情報、図書館のネットワーク基盤の原点に立ち返って、組織の改革と運営を進めて参ります。ご協力の程よろしくお願い致します。