佐藤 直樹(さとう なおき)

財務・施設・環境安全保健担当

メッセージ

21世紀も十余年が過ぎて世界の勢力図は明らかに変わりつつあり、地球環境問題や不安定経済、民族対立の絡む政情不安などに抜本的な改善が見込めない中、国内でも、少子高齢化、東日本大震災など種々の災害からの復旧問題や若年層の意欲の減退など、さまざまな喫緊の課題に直面しています。当然、それらは国の高等教育や研究振興などの施策にも影響を及ぼし、国立大学には平成28年度からの第3期中期目標・中期計画期間での「抜本的改革」が求められ、第2期残期もそのための「加速期間」として、真摯な対応が期待されています。

このような背景の下、京都大学が今後も「自由の学風」を尊ぶ基本理念に基づいて真の発展と社会への広範な貢献を目指すには、その歴史と伝統に学んで堅持・延展すべき点と、自らを省み向後を見込んで改善・変革すべき点とを見極めつつ、学生の視点も尊重しながら教職一丸となって全学の知恵を結集した方策を講じていくことが不可欠です。

今般拝命した担当事項の財務・施設・環境安全保健はいずれも大学の教育研究活動を支える根幹と位置づけられ、それぞれについて時宜に適ったそのような方策を如何に的確に打ち出せるかが、京都大学の今後を左右すると言っても過言ではないと思われます。それゆえ、自らのあまりに荷が勝ち過ぎた重責に身の縮む思いを強くしており、一から学びつつ衆知を集めて職務に臨む外ないと認識している次第です。

財務に関しては、ますます厳しさを増す状況下で、研究大学たる京都大学の教育研究を軸とする多様性を尊重し増進して、よい意味での「京大らしさ」を伸ばすためには、これまで以上の知恵を絞らなければなりません。自身には皆無の経営的観点も必須と感じつつ、さまざまな面での効率向上は不可避と思いますが、それ一辺倒に陥ることなく極力俯瞰的かつ先見的な眼をもつようにして、全学のバランスの取れた発展に努めたいと考えています。

施設についても、基本的には同様に考えています。京都大学がもつ施設は、立地・来歴・規模・機能・寿命などの点でも実に多彩であり、その整備・管理・運用に当たっては複眼的な視野が不可欠です。学生、教職員にはもちろんのこと、本学のさまざまな取り組みにいろいろな立場で関わってくださる学外の皆さんにとっても、それらの施設は活動の直接の舞台として、また生活空間の大事な構成要素として欠くべからざるものです。近年多発するさまざまな災害を念頭に置いた危機管理の観点も把持しつつ、教育研究等の現場の状況に目を向け、併せて全学的な視野からその充実や活用を図ることは、京都大学の魅力を高める意味からも肝要と思われます。

環境安全保健の問題は、大学の中だけに留まらない事案が少なくありませんが、何といっても主役たる学生の安心安全を担保することが一番です。しかし、それには学生の皆さんの主体的な取り組みも必須です。そして、いわばハードもソフトも総動員し、全学を挙げて健全で快適なキャンパス環境を持続的に構築してゆくことが、京都大学の魅力を高める一助となるに相違ないとも考えています。

以上のいずれの事項も多くの困難な問題を抱えており、それらに対処するには、本学の基本理念に謳う「対話を根幹」とする姿勢を教育に限らず堅持して臨まねばなりません。そのためには、学内の皆さんはもちろんのこと学外のさまざまな立場の皆様からのご支援とご協力を賜り、山極総長のリーダーシップの下、文字どおり微力を尽くしたいと思います。