眞崎知生名誉教授が文化功労賞受賞 2005年11月3日
眞崎 知生 名誉教授
眞崎教授は、東京都出身、昭和37年東京大学医学部を卒業、一年間のインターン修了後、東京大学大学院医学研究科博士課程に入学、昭和41年に同退学後、ただちに東京大学医学部助手に採用されました。同50年筑波大学基礎医学系教授に転出、平成3年1月より本学医学部教授併任、同年4月より専任となり平成 10年3月の退任まで同職を務めました。平成9年4月より国立循環器病センター研究所所長を併任し、平成10年4月より専任となり、平成12年停年退官されました。平成10年4月より、本学名誉教授、平成15年4月からは大阪成蹊大学学長として活躍しておられます。
同名誉教授の今回の受賞の対象となった業績は「エンドセリン(内皮由来血管収縮因子)の同定とその生理活性」です。
同教授の研究は、骨格筋、心筋、平滑筋、血管、血管内皮細胞と拡がり、それぞれの段階で大きな業績をあげています。最初、江橋節郎氏(東京大学名誉教授)のもとで同氏の発見した筋のアクトミオシンについてその収縮増強因子、アルファアクチニンを精製、これが全く新しい蛋白質であることを発見しました。さらに、その物理化学的性質、生物活性、その全一次構造、細胞内局在、分子種とその意義などについて一貫してこの研究を続けています。
同教授はまた筋の蛋白質が筋発生分化の過程で分子種の変換を行うことを示しました。この研究成果も国際的にきわめて高い評価を得、その後の筋蛋白質の遺伝子発現の研究の爆発的な展開を促しました。
同教授はさらに平滑筋を中心とする研究へとすすみました。この研究の中から構造蛋白質、M蛋白質の発見、いくつかの筋構造蛋白質の全一次構造決定と、その推定高次構造の発表は高く評価されています。
また、この研究の過程で、内皮由来の強力な血管収縮因子を単離精製、構造決定し、これをエンドセリンと命名しました。同教授はこのエンドセリンの化学構造、生物活性、3種の分子種の存在、受容体のクローニング、その構造解析、細胞内合成経路、細胞内情報伝達系の解析、またその生理的、病態生理的意義の解明などの仕事を組織的にきわめて短時間に行い、世界の多くの研究者の注目を集めました。エンドセリンは血管の機能調節機構に新しい概念を導入すると同時に、循環系以外でもこのペプチドが重要な働きをしていることが示され、生命科学分野全体に大きな影響を与えています。また、エンドセリンの発見によって血管生物学という新しい学問分野が形成されることとなりました。
さらに、血管内皮細胞から酸化LDL受容体の遺伝子を単離することに成功し、この分子の構造および機能を解明しました。同教授はこの分子が動脈硬化症の発症・進展において非常に重要な役割を果たしていることを明らかにすることにより、心血管性病変の根本的病態である動脈硬化症に関する研究において新たな研究領域を開拓されました。
医学研究科としましても以上のような眞崎教授の目ざましい業績に対する今回の受賞はまことに喜ばしいことです。