柳田 充弘 教授が文化功労賞受賞 2004年11月3日
柳田 充弘 教授
柳田充弘教授は、昭和39年東京大学理学部を卒業された後、スイス国ジュネーブ大学、イタリア国ナポリ市国際・遺伝生物物理学研究所、東京大学医科学研究所、米国メリーランド州立大学等、一連の高い水準の研究機関において研鑽を積まれました。その後、同46年京都大学理学部助教授に着任、同53年教授に昇任されました。平成7年大学院理学研究科に配置換後、同11年新設された京都大学大学院生命科学研究科に配置換となりました。また国立遺伝学研究所細胞遺伝研究系教授、東北大学医学部講師を併任されました。柳田教授は、独立研究科である本学生命科学研究科(平成11年に発足)の創設に多大な貢献をされ、平成13年度より2年間研究科長としても本研究科のリーダーシップをとられました。
柳田教授は、真核生物の細胞周期制御機構、とりわけ染色体分配機構の解明に焦点を絞った研究を行ない、多くの優れた業績を残されました。このテーマで研究を始められた1970年代に、研究材料として分裂酵母により早く注目された慧眼が、後の研究の飛躍的な発展に通じました。先駆的な解析技術を自ら開発・駆使し、遺伝学、分子生物学、生化学、細胞生物学等の複合的な視野から精力的な解析を行ない、真核生物の染色体分配に関わる数多くの因子を新規に同定されました。またこれらの因子群が酵母のみならず、真核生物全体の染色体研究においても重要な鍵であることを示し、世界中の研究者の注目を集めました。実際、柳田教授自身近年になって、酵母で同定した遺伝子について、ヒトにおける相同遺伝子を分離解析し、これらの遺伝子機能の普遍性についてヒト細胞を用いた解析を進めています。こうした一連の研究結果から、分子レベルでは理解し得なかった染色体の動態が、今日我々が理解するまでに明らかになった過程には、同教授の貢献が大であることは世界中の研究者が等しく認めるところであります。
学会等の活動では、平成11年より同13年まで日本分子生物学会会長を務められる等、国内の学会諸委員を歴任されました。またいくつもの国際学会を主宰し、学内外、国内外における教育研究行政、研究交流に多大な貢献をされてきました。また、国内学会のみならず、平成7年ヨーロッパ分子生物学機構(EMBO)外国人会員、同12年英国王立協会外国人会員等海外の研究機構の外国人会員として選出されておられます。
以上のような同教授の貢献に対して、国内からの評価として平成12年東レ科学技術賞、同13年朝日賞、同14年上原賞、同14年紫綬褒章、同15年日本学士院賞、恩賜賞が授与されました。
以上のように、同教授の研究者、教育者としての多大なる功績が評価され、文化功労賞者として顕彰されたことは、誠に喜ばしい限りであり、お祝い申し上げる次第であります。
大学院生命科学研究科