加藤 和也 教授
加藤 和也教授は、昭和50年東京大学理学部を卒業、同大学大学院理学研究科修士課程を同52年に修了し、同大学理学部助手となり、同55年理学博士号を取得後、同57年同大学理学部講師、同59年同大学理学部助教授、平成2年同大学理学部教授、同4年東京工業大学理学部教授、同9年東京大学大学院数理科学研究科教授を経て、同13年京都大学大学院理学研究科教授に就任し、現在に至っています。
加藤教授の専門は、有理数体上定義された代数多様体の整数論の研究で、数論幾何学と呼ばれています。
加藤教授はまず、代数的整数論の最高の結果である類体論を高次元の体に拡張しました。一部齋藤秀司氏との共同研究によりアーベル拡大のガロア群の明示的記述を与え、代数的整数論の古典的結果の高次元化を明らかにしました。ついで、分岐理論の高次元化においては、セールのアルティン表現の存在予想を2次元の場合に解決し、齋藤毅氏との共同研究で、ブロッホの導手公式など、高次元エタールコホモロジーの基本的な問題について決定的な成果を挙げました。
p進ホッジ理論の研究においては、一部兵藤治氏との研究で、フォンテーンが定式化したCst予想のかなりの部分を解決し、この結果はこの分野の基礎となりました。
代数多様体の L 関数の特殊値の研究においては、ブロッホ氏との共同研究により、p進ホッジ理論を用いて精密な予想を定式化し、これをリーマンゼータ関数について示しました。さらに、保型形式のL関数について、オイラー系を用いて保型形式の岩澤主予想を部分的に解決し、バーチ‐シンナートン‐ダイアー予想のp進類似の一部を導くなど画期的な成果を挙げました。これは、数論幾何学の最新理論を駆使するものであり、世界的に非常に高い評価を受けています。
log幾何の研究は、p進ホッジ理論の基礎研究として始められたが、一般の退化の研究等に広い応用を持つことを明らかにしました。
このように、加藤教授は、数論幾何学の重要な諸問題について、多岐にわたる真に独創的な業績を挙げ、世界の数論幾何学研究に指導的役割を果たして来られました。これらの業績に対し、昭和63年日本数学会賞、平成8年井上学術賞、平成14年朝日賞が授与されました。