「日本学術振興会賞」を受賞した若手研究者の中から,我が国の学術の発展に寄与することが特に期待される者5名以内に与えられる日本学士院学術奨励賞を岩田 想 医学研究科教授が受賞されることになりました。
授賞式は,6月に日本学士院で行われる予定です。
以下に岩田教授の略歴,業績等を紹介します。
岩田 想教授は平成3年に東京大学農学系大学院農芸化学専攻博士課程を修了した後,同8年からスウェーデンウプサラ大学生化学科講師,同12年から英国インペリアルカレッジロンドンの教授を歴任した後,同19年から京都大学大学院医学研究科教授に就任し,現在に至っています。
同教授の専門は膜蛋白質のX線結晶構造解析であり,各種の生命科学的に重要な膜蛋白質の構造を明らかにしてきた事が今回の日本学士院学術奨励賞受賞の対象となりました。
岩田教授は高エネルギー物理学研究所においてシンクロトロンを用いた最新のX線構造解析の技術の開発に携わりました。その技術を重要な生物学的問題である膜蛋白質に応用するため,ドイツのマックスプランク生物物理学研究所に渡り,呼吸鎖の末端酵素であるシトクロム酸化酵素の構造解析に成功しました。 また,膜蛋白質を抗体フラグメントとともに解析する技術の開発にも参加しました。この後,ウプサラ大学に赴任し,ここで呼吸鎖の中間酵素であるシトクロムbc1複合体及び大腸菌の呼吸鎖末端酵素ユビキノール酸化酵素の構造解析に成功しました。また解析したシトクロムbc1複合体の構造を基に,二種類の遺伝病の原因について解明することに成功し,膜蛋白構造の研究が実際の臨床医学に貢献できることを示しました。その後,インペリアルカレッジに赴任し,呼吸鎖酵素に加えて,輸送体,受容体の構造解析を行い,ギ酸脱水素酵素,コハク酸脱水素酵素,ラクトース輸送体及び光化学系2の構造解析に成功しています。光化学系2は植物の葉緑体において,地上の生物すべてが呼吸している酸素を生成しているきわめて重要な膜蛋白質です。
なお,岩田教授は,日本学術振興会賞も合わせて受賞しました。