京大ウィークス期間中に全国各地の10施設が公開イベントを行いました。(2011年10月15日~23日)

京大ウィークス期間中に全国各地の10施設が公開イベントを行いました。(2011年10月15日~23日)

 本学では、北海道の研究林から鹿児島県・屋久島の野生動物研究センター観察所まで、日本全国各地に数多くの教育研究施設を展開しています。これらの隔地施設は、本学の多様でユニークな教育研究活動の拠点として重要な役割を果たすとともに、それぞれの地域における「京都大学の窓」として親しまれてきました。

 京都にある大学キャンパスだけでなく、全国各地の教育研究施設の活動を知っていただくため、この秋、初の取り組みとして、10月15日~23日を「京大ウィークス」と称し、期間中、10施設で集中的に公開イベントを行いました。

 フィールドワークを体感する自然観察会から、各施設の教育研究を知る講義・体験実験、登録有形文化財建物のライトアップまで、様々な公開イベントに全国で延べ3,200人の方々の参加がありました。

 これらの全国に数多く展開している教育研究施設では、今回のイベントの他にも、年間を通じて市民の皆様に参加していただけるイベントを行っています。ぜひご参加いただき、多様でユニークな教育研究活動を体感してください。

「京大ウィークス」各施設の公開イベント

A.生態学研究センター 一般公開(10月15日・滋賀県大津市)

 滋賀県大津市にある生態学研究センターは、全国共同利用施設として利用されており、創設20周年を迎えました。現在では特に「生物多様性および生態系の機能解明と保全理論」の研究を大きな目標として教育研究を行っています。

 一般公開当日は、あいにくの雨模様にも関わらず、親子連れや部活動で参加した中学生など32名の来場がありました。

 写真の多い講義や小笠原の珍しい植物を紹介した講義、葉っぱのにおいを当てる実験を交えた講義などを1時間30分にわたり行った後、センター施設内の森を、担当教員の植物に関する説明を交えながら散策しました。

 短い時間ではありましたが、参加者からは、実験や特定の生物のこと、顕微鏡観察や野外観察のことなど幅広い内容への感想があり、「面白かった」と好評でした。


講演「学校で習わない生きものの不思議」

実験「葉っぱのにおいを当ててみよう」

センターの自然観察会

B.信楽MU観測所 MUレーダー見学ツアー(10月15日・滋賀県甲賀市)

 滋賀県甲賀市にある生存圏研究所 信楽MU観測所は、全国共同利用施設として利用されており、大気観測用の大型レーダーとしては世界最高レベルの性能を誇る装置を有した観測施設です。

 今回のMUレーダー見学ツアーは、信楽MU観測所として7年ぶりの一般公開であり、午前と午後の2回にわけて実施しました。雨天にも関わらず200名もの参加がありました。

 当日は、生存圏研究所の教員による講演、MUレーダーを始めとする種々のレーダーや光を用いたライダーの見学、気球観測のデモンストレーションを行いました。

 参加者からは、「機会があれば、また見学したい」「見学時間をもっと多くしてほしい」などの感想をいただき、再度見学を希望する声が多くありました。また、「信楽町内にこのような素晴らしい施設があることが驚きです」「実際のデータや観測結果や研究成果が実生活に良い影響を及ぼすというPRがあればもっといいと思う」などの感想から、施設に対する関心の高さと展示内容についても好評であったことが伺えます。

 本イベントは報道に複数回取り上げられたため、その後の見学希望など反響も大きく、今後も見学会を実施していく方向で検討しています。


担当教員による講演

大気観測用レーダーの説明

気象気球観測のデモンストレーション

C.上賀茂試験地 秋の自然観察会(10月15日・京都市北区)

 京都市北区にあるフィールド科学教育研究センター 上賀茂試験地は、面積47ha、800種以上の樹木が生育している樹木園や天然生林(二次林、里山)があり、他大学や他機関からも幅広い分野の教育・研究フィールドとして、数多く利用されています。

 毎年春と秋に一般市民の方を対象とした自然観察会を開催していますが、今回は京大ウィークスのイベントとして例年よりも約1か月早い開催となりました。定員を大幅に上回る応募があり、当日は27名の参加がありました。

 参加者は午前中、3班に分かれ、教職員による植物の解説を聞いたり、落ち葉や松ぼっくり拾いをしたりしながら、自然観察コースを約2時間かけて散策し、午後からはクラフト作製と構内散策の2班に分かれて行動しました。クラフト作製の班では、葉脈標本のしおりや木の実などでのネイチャークラフトを作製し、構内散策の班では、教員の解説により構内等の散策や標本館の見学を行いました。

 参加者からは、「紅葉の時期に開催してほしい」などの要望もある一方で、「樹木についての知識が広まった」「松の種類の多さに感激した」「来年も参加したい」などの感想が寄せられ、好評でした。


リョウブの葉の付き方についての説明

木の実などで作製したリース

※フィールド科学教育研究センター上賀茂試験地のホームページでも同イベントの報告を掲載しています。
http://fserc.kyoto-u.ac.jp/kami/

D.瀬戸臨海実験所 施設見学会(10月15日・和歌山県西牟婁郡白浜町)


「施設の歴史と役割」講演
(写真提供: 瀬川正博氏)

 和歌山県西牟婁郡白浜町にあるフィールド科学教育研究センター 瀬戸臨海実験所は、黒潮の影響を受けた豊かな自然環境を活かし、主に海産無脊椎動物の分類学・進化学・生態学に関する研究を進めている実験所です。国立大学で唯一、実験水槽室を水族館として一般公開しており、学校の長期休みに合わせた解説ツアーや「きのくに県民カレッジ」と連携した体験学習を行うなど、多くの方にご利用いただいています。

 今回の施設見学会は、大人を対象として施設の歴史や役割を知っていただく目的で初めて開催したものです。

 当日は、担当教員が「京都大学瀬戸臨海実験所の歴史と役割」の題名で約45分間の講演を行った後、小雨の中、研究棟・図書室・御幸記念碑・特別研究棟・宿泊棟を見学、続いて、担当職員の案内により約50分間の水族館バックヤード見学を行いました。

 講演や見学時には数多くの質問が積極的に寄せられ、参加者からは「非常に貴重な研究施設だと思った」などの感想をいただき、地元の方の理解が深められた有意義な一日でした。


電子顕微鏡教室の見学(写真提供: 瀬川正博氏)

E.地球熱学研究施設本部 建物ライトアップ(10月15日・大分県別府市)

 大分県別府市にある理学研究科附属地球熱学研究施設本部は、地球熱学に関する教育・研究を行っており、創建当時からの築88年の建物が国の登録有形文化財に指定されています。毎年夏休みには一般公開や施設のライトアップを実施しており、たくさんの地域の方に参加いただいています。

 今回は、京大ウィークスの期間に合わせて特別に登録有形文化財であるレンガ造りの建物のライトアップを行いました。建物前面の敷地の草刈りも済み、広がりのある雰囲気の中、夕刻6時過ぎからライトアップを開始しました。ややまだ明るさが残る状況から、暗い夜空に美しく浮かび上がるまで、ライトアップされた建物の変化を楽しむことができました。

 当日は、約20名の方が敷地内に入り、玄関までの見学を楽しんでいただいたほか、道路から興味を持って、建物を見ながら通行される市民の姿もありました。

 参加者からは「きれいな建物のライトアップであった」「建物の内部に入ることができてよかった」「気になっていた建物の由来を聞くことができた」などの感想をいただき、秋の夜長を楽しんでいただくことができました。


美しくライトアップされた登録有形文化財の建物

F.桜島火山観測所 設立50周年記念講演会・施設公開(10月15・16日・鹿児島市)

 鹿児島市の桜島にある防災研究所附属火山活動研究センター 桜島火山観測所は、南九州にある桜島や霧島などの活動的な火山に設置された衛星観測点からデータを集約し、研究を行っている拠点施設です。昨年には、設立50周年を迎え、今回これを記念して講演会と施設公開を行いました。

 記念講演会では、防災研究所の教員が、「桜島の噴火と防災」「桜島火山活動の現状と今後の見通し」と題して桜島火山の現状についての講演を行い、95名の参加者がありました。

 また、施設公開は、初日は天候も悪く参加者は41名にとどまりましたが、2日目は晴天で192名の参加がありました。展示内容や観測計器について積極的な質問が多数寄せられ、長時間にわたって滞在した方もいました。さらに、現在の桜島の火山活動に関しての質問も多く寄せられ、大学の研究者と積極的に会話をして交流を深めたいという雰囲気が感じられました。

 本イベントは地元報道機関にも多数取り上げられました。展示内容も参加者から大変好評であり、今後もこのような施設公開を続けてほしいという声がたくさん聞かれました。


「桜島の噴火と防災」講演会

観測機器の解説

展示写真について熱心に聞く参加者

G.宇治キャンパス公開2011(10月22・23日・京都府宇治市)

 京都府宇治市にある宇治キャンパスは、主に自然科学・エネルギー系の研究所や研究科等が置かれており、最新鋭の教育・研究を行う研究室が集まるテクノロジー開発の最先端地域です。普段見ることのできない実験施設を公開し、最新の研究成果を広く知っていただくため、平成9年度から毎年キャンパス公開を行っています。

 当日の様子はこちらをご覧ください。

※ 宇治キャンパスのホームページでも同イベントの報告を掲載しています。
http://www.uji.kyoto-u.ac.jp/topics/20111107/topics20111107.html

H.芦生研究林 芦生の森自然観察会 入門編(10月22日・京都府南丹市)

 京都府南丹市にあるフィールド科学教育研究センター 芦生研究林は、4000haを超える広大な面積を有し、森林や山村に関する研究や学内外の学生実習など様々な教育研究の場として活用されているだけでなく、一般市民を対象にした公開講座や研修なども開催し、多くの方に利用されています。

 芦生の森自然観察会入門編は毎年春と秋に行っており、毎回たくさんの方にお申込みいただいています。今回も多数の申込者の中から16名に参加いただきました。

 当日の天気予報は雨でしたが、幸いイベント終了までは雨が降らず、予定通り、研究林での研究内容やシカ害の現状などの説明をしながら、自然観察をすることができました。特に峠からの日本海の眺望はこれまでにない良い状態で、参加者に楽しんでもらうことができました。

 参加者からは、「親切な対応がよかった」「樹木の説明が勉強になった」「シカの被害がここまでとは驚きだった」「人と林業との長い関わりを知ることができてよかった」などの感想があり、自然を感じつつ楽しみながら学習されていました。今後も継続的に開催していく予定です。


シカ排除柵の見学

樹木の識別方法についての説明を受ける様子

森の歴史についての説明を受ける様子

※フィールド科学教育研究センター芦生研究林のホームページでも同イベントの報告を掲載しています。
http://fserc.kyoto-u.ac.jp/asiu/news.html

I.宇治川オープンラボラトリー 公開ラボ(10月23日・京都市伏見区)

 京都市伏見区にある防災研究所附属流域災害研究センター 宇治川オープンラボラトリーは、多くの観測・実験装置群を擁し、世界有数の規模を誇る総合実験施設です。全国共同利用施設として利用されており、様々な教育研究活動を行っています。

 今回実施した公開ラボは、同日に開催している宇治キャンパス公開の公開ラボの一つとして毎年開催しているものです。今年は東日本大震災が起こり、市民の間に防災への関心が高まったこともあって、地域の自主防災組織の方々など200名を超す参加者があり、例年以上に多くの方に参加いただきました。

 津波や土石流の実験施設では、それぞれの災害のメカニズムについての説明に対し、熱心に質問する参加者が多く、特に津波に対する関心は非常に高かったように感じられました。また、地下空間での浸水状態の各種体験施設は想定以上に好評であったため、予定よりも時間を延長して対応しました。

 宇治キャンパスとの間にシャトルバスを運行しており、宇治キャンパス公開と併せて楽しんでいる様子でした。

 参加者からは、「普段体験できないことが体験できてよかった」などの感想が寄せられ、たくさんの人に興味を持ってもらうとともに、災害への備えを再認識してもらうことができました。


土石流実験で砂防ダムの効果を体験する児童

人工降雨装置で豪雨を体験する参加者

J.原子炉実験所 アトムサイエンスフェア実験教室(10月23日・大阪府泉南郡熊取町)

 大阪府泉南郡熊取町にある原子炉実験所は、研究用原子炉(KUR)等の施設を共同利用研究に利用しながら、核エネルギーと放射線の利用に関する研究教育活動を進めています。

 また、科学に興味を持つ若者が少しでも増えることを願いながら、小・中学生を対象としたアトムサイエンスフェア実験教室を平成14年から毎年開催しています。

 今年で10回目を迎える「アトムサイエンスフェア実験教室2011」では、小学生を中心として43名の参加がありました。「飛行機雲を作ろう!(拡散霧箱実験)」、「ひかるイクラを作ってみよう!」の実験教室や「光の不思議を体験しよう」、「発電を体験しよう」などの体験コーナーでは真剣に実験に取り組む姿が見られ、驚きの体験に歓声を上げていました。実験や体験内容について、熱心に質問する参加者もあり、未来の科学者を彷彿とさせる姿も見受けられました。

 参加者からは、「面白かった」「また参加したい」などの感想があり、好評のうちに終了しました。


実験教室「ひかるイクラを作ってみよう!」

体験コーナー「発電を体験しよう」