足立晃正 医学研究科助教(現:東京都立墨東病院)、本田哲也 同講師(現:浜松医科大学教授)、椛島健治 同教授らの研究グループは、女性ホルモンの一種であるエストラジオールが、好中球やマクロファージなどの免疫細胞の活性化を制御し、乾癬において抑制作用を発揮していることを動物モデルで突き止めました。
乾癬は、全世界で1%ほどが罹患しているとされる慢性炎症性皮膚疾患です。これまで、女性は男性にくらべて乾癬の罹患率・重症度が低いことが報告されていました。しかし、その機序は不明でした。本研究では女性ホルモンに着目し、マウスの乾癬モデルを用いてその機序を検討しました。エストラジオールの産生ができないマウスでは皮膚炎症は増悪し、逆にエストラジオールの補充は皮膚炎症の増悪を抑えました。エストラジオールは好中球やマクロファージなどの免疫細胞に作用し、これらの細胞の活性化を抑え、皮膚炎症を抑制していることが明らかとなりました。本研究により、女性ホルモンが皮膚の健康に寄与する新たなメカニズムが解明されました。今後、女性ホルモンに着目した新たな乾癬治療法の開発が期待されます。
本研究成果は、2022年5月16日に、国際学術誌「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」にオンライン掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.jaci.2022.03.028
【書誌事項】
Akimasa Adachi, Tetsuya Honda, Gyohei Egawa, Shuto Kanameishi, Riko Takimoto, Toshiya Miyake, Md Razib Hossain, Mayumi Komine, Mamitaro Ohtsuki, Matthias Gunzer, Koichi Ikuta, Kenji Kabashima (2022). Estradiol suppresses psoriatic inflammation in mice by regulating neutrophil and macrophage functions. Journal of Allergy and Clinical Immunology, 150(4), 909-919:e8.