記憶の正体を解き明かす―記憶関連タンパク質が“集合する”シミュレーションに成功―

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 林康紀 医学研究科教授、細川智永 同准教授、浦久保秀俊 藤田医科大学准教授、Vikas Pandey 同研究員の研究グループは、人が記憶するときに脳内で起こるタンパク質の集合をコンピュータシミュレーションすることに、世界で初めて成功しました。私たちが何かを覚えるとき、記憶に関わるタンパク質は「液-液相分離」と呼ばれる液滴状の集合体を形成します。シミュレーションでは、タンパク質が複雑に多相の集合体を形成する様子が再現されました。

 記憶に関係するタンパク質の集合は人の記憶形成の基盤です。それゆえ、統合失調症をはじめとする多様な精神・神経疾患の解明につながると期待されます。

 本研究成果は、2025年4月7日に、国際学術誌「Cell Reports」にオンライン掲載されました。

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記憶関連タンパク質CaMKIIの形に依存する液-液相分離。CaMKIIは核(黒丸)の周囲に12本の短い手(緑丸)がつながった形状をしている。橙色の球体は、ほかの2種類の記憶関連タンパク質が形成する液-液相分離である。CaMKIIの手が2本しかない場合は、CaMKIIを含む液-液相分離(緑色領域)は形成されない(左下)。一方、CaMKIIが長い手を持つ場合は、2相が接着するタイプの2相分離が形成される(右下)。このような記憶関連タンパク質の液-液相分離は、シナプス後スパインと呼ばれる場所で生じる(左上)。
研究者情報
研究者名
細川 智永