絶縁体単層膜における未知の波紋の可視化に成功―量子スピン液体の痕跡?―

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 幸坂祐生 理学研究科教授、芥川聖 同修士課程学生(研究当時)、大間知秀祐 同修士課程学生(研究当時)、岩道悠希 同修士課程学生、小野孝浩 同修士課程学生(研究当時)、田中伊蕗 同修士課程学生(研究当時)、立石将太郎 同修士課程学生(研究当時)、村山陽奈子 同博士課程学生(現:九州大学助教)、末次祥大 同助教、寺嶋孝仁 同教授(現:同研究員)、浅場智也 同特定准教授、笠原裕一 同准教授(現:九州大学教授)、松田祐司 同教授、橋本顕一郎 東京大学准教授、芝内孝禎 同教授、高橋雅大 大阪大学博士課程学生、ニコラエフ・セルゲイ 同特任助教、水島健 同准教授、藤本聡 同教授らの研究グループは、キタエフ量子スピン液体の有力候補物質として知られる三塩化ルテニウム(α-RuCl3)において、これまでにない新たな量子干渉模様を発見しました。

 キタエフ量子スピン液体は、配置されたスピンが複雑に絡み合った量子もつれと呼ばれる状態を持っています。この状態は、量子コンピューターへの応用の可能性があるため、科学者たちの注目を集めています。しかし、量子スピン液体状態を実験的に検出することは極めて難しく、現在も世界中で活発に探索が進められています。今回、α-RuCl3単層膜で初めて発見されたこの干渉模様は、α-RuCl3に存在する特徴的な量子状態を反映しており、キタエフ量子スピン液体の手掛かりとなる可能性を秘めています。

 本研究成果は、2024年10月25日に、国際学術誌「Physical Review X」にオンライン掲載されました。

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三塩化ルテニウム(α-RuCl3)において発見された量子干渉模様。走査型トンネル顕微鏡像。

研究者のコメント
「水面に石を投げると波紋が広がります。逆に、波紋の存在によって水面の存在を知ることができます。本研究成果では、石の代わりとなる原子的な欠陥に着目して、その周りに生じる波紋を発見しました。波紋の存在は、水面に相当する『何か』がそこにあることを意味します。実験的に探索が難しかった量子スピン液体こそがその『何か』ではないかと我々は期待しています。今後も探求を続けていきます。」(幸坂祐生)
研究者情報
研究者名
寺嶋 孝仁
研究者名
笠原 裕一
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1103/PhysRevX.14.041026

【書誌情報】
Y. Kohsaka, S. Akutagawa, S. Omachi, Y. Iwamichi, T. Ono, I. Tanaka, S. Tateishi, H. Murayama, S. Suetsugu, K. Hashimoto, T. Shibauchi, M. O. Takahashi, S. Nikolaev, T. Mizushima, S. Fujimoto, T. Terashima, T. Asaba, Y. Kasahara, and Y. Matsuda (2024). Imaging Quantum Interference in a Monolayer Kitaev Quantum Spin Liquid Candidate. Physical Review X, 14, 4, 041026.