ピーター・カールトン 生命科学研究科准教授、佐藤綾 同博士研究員、カルロス・ロドリゲス 同博士課程学生らの研究グループは、線虫C. elegansを用いて、精子と卵子を作る際の特別な細胞分裂(減数分裂)を制御するメカニズムの一端を明らかにしました。
減数分裂は、DNAを2回連続して分離する特殊な細胞分裂です。線虫C. elegansは、ホロセントリックと呼ばれる構造の染色体を持ち、減数分裂では、染色体(注1)の部位の長さを測ることで、減数分裂における染色体の分離面を決めていることが知られていましたが、このメカニズムは不明でした。今回カールトン准教授らのグループは、このメカニズムについてモデルを提唱し、これを支持する実験的証拠とシミュレーション解析の結果を得ることに成功しました。細胞は、生体分子の物理化学的性質を利用して、細胞内器官などの大きさや長さといったサイズを検知、調節することができることが知られていますが、本研究は、細胞が染色体の部位の長さを比べて、どちらが長い、どちらが短いということを検出できる分子メカニズムについて、新しいモデルを提唱しました。
本研究成果は、2024年10月11日に、国際学術誌「Current Biology」にオンライン掲載されました。
「細胞は、生体分子の様々な物理化学的性質を駆使して、細胞内の器官や複合体のサイズを検出したり、調節できることが知られていますが、これまで線虫の細胞が、定規もなしに染色体の長さを比べて、どちらの染色体部位が短く、どちらの部位が長いかを検出できるメカニズムは謎に包まれていました。今回私たちは、生殖細胞に存在するシナプトネマ複合体と呼ばれるタンパク質複合体の、相分離と呼ばれる物理化学的性質を利用して、長さの検出が行われるというモデルを提唱しました。定規も持たずに、細胞はどうやって染色体の部位の長さを比べているのだろう?とあれこれ仮説を立てている時間が一番楽しかったです。」(ピーター・カールトン、佐藤綾)
【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.cub.2024.09.034
【書誌情報】
Carlos M Rodriguez-Reza, Aya Sato-Carlton, Peter M Carlton (2024). Length-sensitive partitioning of Caenorhabditiselegans meiotic chromosomes responds to proximity and number of crossover sites. Current Biology.