介護者の食事行動への罪悪感と介護重責感―重度嚥下障害者の継続的経口摂取訓練の影響―

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 経管栄養の普及もあり、十分に口から食べられないまま在宅で暮らす方が増えています。毎日の食事ケアをする介護者は重責感も強く、さらに自らの食事に罪悪感を持ち立ったまま簡便に済ませる人もいますが、このような介護者の姿はあまり知られていません。口から食べられるよう支援する摂食嚥下リハビリテーション(摂食リハ)は、介護者にも良い影響があるのではと考えました。

 中山健夫 医学研究科教授と森寛子 静岡社会健康医学大学院大学准教授らの研究グループは、罪悪感を持つ介護者割合、摂食リハと介護重責感の関係、介護のやる気への影響を介護者に質問調査しました(2009年8月~2021年1月)。100人中55名の介護者から回答を得た結果、介護者の48%は患者がもっとも食べられなかった時に罪悪感を持っていましたが、摂食リハを始めると罪悪感を持つ介護者は22%に減りました。患者の8割以上がほぼ全介護でしたが、患者の座位時間を増やすように努めるなど、介護全体へのやる気を高める介護者が80%いました。けれども、患者の食べ方回復は介護のやる気と関連は見られませんでした。本研究は介護者の自己報告のため、今後、前向きな追跡調査など科学的検証が必要です。

 本研究成果は、2024年8月22日に、国際学術誌「Journal of Parenteral and Enteral Nutrition」にオンライン掲載されました。

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研究者のコメント
「本研究は、経管栄養者の介護者へのグループインタビューが発端です(Nutrition in Clinical Practice 34(2) 2019)。熱心なケア提供ゆえに、社会との隔絶感や自分の食事へ罪悪感を持つ介護者の気持ちを知りました。コロナ禍で摂食リハ訪問が中断された中、量的研究による知見がまとまりました。地道なケア提供を医療者が認めたり、経管栄養でもわずかに口から食べられることが介護者の心理的支援になるなど、経口回復以外の摂食リハの良い影響を伝えられればと思います。」(森寛子)
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1002/jpen.2679

【書誌情報】
Hiroko Mori, Ayako Nakane ,Yuri Yokota, Haruka Tohara, Takeo Nakayama (2024). Caregiver burden and eating-related guilt during dysphagia rehabilitation: A descriptive cross-sectional time series study. Journal of Parenteral and Enteral Nutrition.