配偶者の心血管疾患と本人の認知症の関係が明らかに

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 井上浩輔 白眉センター/医学研究科准教授と、古村俊昌 米国ボストン大学(Boston University)修士課程学生、Maria Glymour 同教授、津川友介 米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)准教授、Elizabeth Rose Mayeda 同准教授らの研究グループは、全国健康保険協会(協会けんぽ)の医療レセプトのデータ(約9.3万人)のデータを用いて、配偶者の心血管疾患(CVD)によって本人の認知症リスクが上昇することを明らかにしました。

 これまでの研究により、CVDは認知症の発症に繋がる重要なリスク要因であることが報告されていました。一方で、個人のCVDがその家族の認知症のリスクにどの程度影響しているかについては明確な検証がされていませんでした。本研究では、全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入する世帯主(被保険者)とその被扶養者を対象とし、被扶養者のCVD発症(脳卒中、心不全、心筋梗塞)の有無における世帯主の認知症診断のリスクの変化を比較しました。その結果、被扶養者がCVDを発症した家庭では、そうでない(被扶養者がCVDを発症していない)家庭と比べて、世帯主が認知症の診断を受けるリスクがより高く認められました。

 本研究結果は、配偶者がCVDを発症した際に、そのパートナーの認知症発症に対するモニタリングを提供する重要性を示唆しています。認知症は現在では治療手段が限られているため、早期発見や予防が重要です。患者本人の健康状態のみならず、世帯全体を意識したケアを提供することは、認知症への対策において重要な視点となる可能性があります。このような家族単位での健康に着目した研究は世界的に見ても限られているため、更なる知見の創出と効果的な施策の開発が求められます。

 本研究成果は、2024年8月27日に、国際学術誌「JAMA Neurology」にオンライン掲載されました。

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最大6年間の追跡の結果、配偶者がCVDを発症しなかった世帯に比べて、配偶者がCVDを発症した世帯では、世帯主が認知症の診断を受けるリスクが32%高かった。
研究者のコメント
「本研究は古村(筆頭著者)が社会疫学を学ぶ中で、多くの研究が個人のみを対象としており、家族や世帯全体に着目した研究が少ないことに気付いた所から始まりました。現在、認知症は治療手段が限られており、早期発見や効果的な予防施策を講じることが重要と言われています。そのため、家族全体に着目した形で認知症のリスク要因を検討することは、認知症への効果的なケアの提供を検討する上で重要な視点である可能性があります。世帯全体を対象とした研究は世界的に見ても限られているため、より効果的な施策の開発に繋がる知見の創出に注力していきたいと思います。」
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1001/jamaneurol.2024.2612

【書誌情報】
Toshiaki Komura, Yusuke Tsugawa, Elizabeth Rose Mayeda, M. Maria Glymour, Kosuke Inoue (2024). Association of Cardiovascular Events With Spouse’s Subsequent Dementia. JAMA Neurology.

メディア掲載情報

京都新聞(10月8日 1面)、朝日新聞(11月1日 夕刊 8面)に掲載されました。