歩きスマホや前抱えリュックサックは歩行中の転倒リスクを増大させることが知られています。スマホ画面注視や前抱えリュックによる足元や周辺視覚情報の損失が、段差や障害物等(外因性の要因)による躓きを誘発することでリスクが増大するとされています。
この度、野村泰伸 情報学研究科教授、矢野峻平 大阪大学大学院生(研究当時)ら、および米国ノースカロライナ州立大学(North Carolina State University)の共同研究グループは、段差や障害物の無い整定地における直線的で一定速度の歩行であっても、歩きスマホに伴う内因性の要因が、歩行の安定性を低下させることを明らかにしました。若年健常者を対象として行われたこの研究では、一定速度でベルトが回転するトレッドミル上を歩行する際の歩行リズム、すなわち歩行周期(歩行サイクル時間)の変動、つまり歩行周期ゆらぎを計測することで、歩行の安定性を反映する指標値が評価されました。画面表示のないスマホを見つめながらの非認知課題歩行とスマホゲームをしながらの認知課題歩行(歩きスマホ)が、スマホを持たない通常歩行と比較されました。非認知・認知両課題で同程度に視覚情報が低下しているにも関わらず、認知課題(歩きスマホ)に対してのみ、他と比べて指標値が低下していることが示されました。これは、歩きスマホに伴う脳内情報処理が、内因性に歩行の安定性を低下させることを示唆しています。
本研究成果は、2024年7月16日に、国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41598-024-66727-1
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/289894
【書誌情報】
Shunpei Yano, Akihiro Nakamura, Yasuyuki Suzuki, Charles E. Smith, Taishin Nomura (2024). Smartphone usage during walking decreases the positive persistency in gait cycle variability. Scientific Reports, 14, 16410.
京都新聞(8月27日夕刊 1面)、朝日新聞(8月30日夕刊 9面)に掲載されました。