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ノボタン属はアジア・オセアニアに100種ほど知られており、観賞用や薬用に利用されています。日本には4分類群が分布していますが、このうち3分類群(ムニンノボタン・ハハジマノボタン・イオウノボタン)は世界自然遺産小笠原諸島に固有であり、いずれも希少です。これらのうち、ムニンノボタンは発見時から個体数が少なく、環境省の保護増殖事業などで集約的な保全が行われてきましたが、ハハジマノボタンとイオウノボタンについては、そういった対策は行われていません。
小林千浩 農学研究科研究員、井鷺裕司 同教授のグループが、小牧義輝 東京大学技術専門職員と共に、ムニンノボタン・ハハジマノボタン・イオウノボタンに加えて普通種であるノボタンなどについて比較ゲノム解析を行ったところ、小笠原固有分類群はいずれも普通種であるノボタンよりも遺伝的多様性が低くなっていました。中でもハハジマノボタンは、有害なアミノ酸変異割合に基づくゲノムの脆弱性が高いことや、ゲノム内や個体間の遺伝的差異がほとんど消失しているなど、ゲノム構造がきわめて脆弱で、ムニンノボタンよりも危機的な状況にあり、早急な保全策の構築が必要であることがわかりました。本研究の成果は、小笠原諸島の生物多様性や独自の生態系の由来を理解し、固有種の保全状態が危機的になる前に、限られたリソースの中で効率的な保全策を講じるために有用な情報を提供するものです。
本研究成果は、2024年7月17日に、国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。
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研究者のコメント
「世界自然遺産小笠原諸島は多くの固有種が生育しており、また、現在も種分化が進行しつつある興味深い生態系ですが、危機的な状況にある生物も少なくありません。この様な場所の生物多様性保全を効果的に行うために、ゲノム情報を有効に活用していきたいものです。」詳しい研究内容について
研究者情報
研究者名
井鷺 裕司
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